狂気の沙汰もアイ次第/神田夏生


狂気の沙汰もアイ次第 (電撃文庫)
狂気の沙汰もアイ次第 (電撃文庫)

評価:★★★☆☆
2016年10月刊。
宇宙人に拉致された7人の日本人が、閉鎖空間のなかで狂気に苛まれながら「アイ」について考えていくというサスペンス。
宇宙人からの理不尽な要求に精神をガシガシと削られながらも、予想以上に真剣に「愛とは何か」を考えていく物語は読み応えがありました。
読後感もまた、意外にも悪くない。
しかしこれ続刊予定が出てるけれど一体どうやって続くのだろう?

☆あらすじ☆
水を飲んだら、無差別殺人。監禁期間は無期限。
宇宙人により遠く離れた星まで拉致された、山口健次ほか地球の男女7人。彼らは宇宙人から「《アイ》を理解するために、あなたたちを観察する」と宣言される。脱出不可能な集団生活の中で、皆に与えられる水分は「飲むと人を殺したくなる水」だけ。当初は、殺人衝動なんて理性で抑えられると自分に言い聞かせていた山口だが──。
人は水を飲まなければ乾き、飢え、死ぬ。理不尽な絶望の中に見つけたわずかな希望とは? そこに賭けた山口のたどり着く結末は? 殺したくない! 殺されたくない! 衝撃のサスペンス・ストーリー。

以下、ネタバレありの感想です。

 

宇宙人だという謎の生命体によって、別の星に拉致された7人の日本人。
閉鎖的な空間で、飲むと人を殺したくなる水を与えられながら、「アイの観察がしたい」という宇宙人マダナイに振り回されていく彼らの戦いを描いてく、というのが本作のストーリーです。

 

てっきりデスゲーム的な話かと予想していたのに、それよりもさらに凶悪なマダナイの要求にゾッとしてしまいました。
自分が殺すかもしれないし誰かに殺されるかもしれないという狂気的な状況に置かれるうえに、全滅したところで解放してもらえるかはマダナイの気分次第という絶望感。
どうすれば脱出できるのか分からないまま、主人公たちはマダナイの求める「アイ」について必死に考えるしかないのです。

 

面白かったのは、マダナイに愛を教えて籠絡することで逃げようと考えた主人公の山口が、7人の中で一番アイを理解できていなかったこと。
マダナイへ教えるべき愛とは何だろうと悩みながら、他の6人がそれぞれ持つ愛への考え方を知り、やがて彼なりの「愛」を理解する。そういう、主人公自身の心の成長が描かれていくところにも予想以上の読み応えを感じました。
作中で描かれていく愛の形も多様で興味深かったですしね。
ラストの遺書で書かれた考え方が一番しっくりきたけれど、鹿川の愛が一番ヒロイックで格好良かったかな。

 

そうして愛について語られていく一方、先が読めなかったのはマダナイがどう出るのかという点。
終盤で明らかになっていくマダナイの正体は意外だったけれど、「愛とは何か」というテーマに絡めてマダナイの変化に説得力をもたせるという意味で構成が巧いな、と感じました。最初の「アイを理解できない宇宙人」というキャラクターだけだと、山口との関係性で心が芽生えるような話にするのは難しいでしょうしね。

 

そういえばメインヒロインの影が薄いと思っていたけれど、正体を含めて考えるとメインヒロインってマダナイといっていいのかも?
仮にそうだとしても個人的にはもう少し姫子を目立たせてほしかったんですけどね。彼女への感情がトリガーになってるっぽかったし、遺書に関して言っても重要な役回りだったわけですし。

 

結局、人間のなかで一番山口と絡んでたのって鹿川だったんだよなぁ。
まぁこの2人の関係性は新鮮で、これはこれで面白かったんですけど。

 

黒幕(?)も登場し様々な裏事情も明かされ、1冊で綺麗にまとまった本作。
でも続編が12月に刊行予定になってるんですよね。どうやって続くんだろう??

 

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