「殺人者たちの王」「ラスト・ウィンター・マーダー」/バリー・ライガ


殺人者たちの王 (創元推理文庫)
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前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2015年11月刊/2016年5月刊。
「さよなら、シリアルキラー」から始まる三部作の2巻・3巻。
2巻は舞台を田舎町からニューヨークに移してサイコサスペンス色が強まり、3巻はこれまでに示された様々な謎を明らかにしつつ全てに決着をつける完結巻でした。
スリリングな展開に震えるほどの緊張を味わい尽くしました。そのなかでも変わらないジャズ、コニー、ハウイーの愛と友情にとても癒やされた・・・・・・。
生まれに苦悩し、自分の中に眠る怪物に怯え、それでも自分自身を持ち続けようと足掻いたジャズ。
21世紀最悪の連続殺人鬼の息子として生まれ育った少年の戦いを描いた青春ミステリーとして、素晴らしい傑作だと思います。最高でした!

☆あらすじ☆
21世紀最悪の連続殺人犯ビリー・デントが脱獄して二カ月、ジャズのもとをニューヨーク市警の刑事が訪れた。父ビリーに施された殺人者としての英才教育を生かして、ニューヨークの連続殺人、通称ハット・ドッグ・キラーの捜査を手伝ってほしいというのだ。渋々ニューヨークに同行するジャズ。だが事件を調べるうちに、故郷で起きた“ものまね師”事件との繋がりに気づく。そして被害者の遺体に書かれた〈ゲームへようこそ、ジャスパー〉のメッセージ。まさか父が? 悩みながらも事件を解決しようとするジャズ。好評の異色青春ミステリ第2弾!

以下、2巻・3巻のネタバレあり感想です。

 

父ビリーとの戦いを覚悟したジャズのもとに舞い込んできたのは、ニューヨークで起こっている連続殺人事件の捜査を手伝って欲しいという依頼。
迷いながらも依頼を引き受けたジャズは、勝手についてきたコニーと共に「ハット・ドッグ・キラー」のプロファイリングを試みるが・・・・・・というように幕を開ける第2巻。

 

この2巻は1巻よりもサイコサスペンスな感じが強くなっていて、猟奇殺人の描写もなかなかにグロテスク。
この「ハット・ドッグ・キラー」と「ものまね師」、さらにはビリー・デントとの繋がりが見えたことで、ニューヨークとロボズ・ノッドに別れたジャズ、コニー、ハウイーのそれぞれに危機が忍び寄っていき、2巻・3巻と立て続けにスリリングな展開が繰り広げられていくのです。

 

これがほんとに緊張を強いてくる。
ニューヨーク市警やFBIの捜査官たちと共に事件の謎を追うジャズはともかく(その安全地帯も終盤には怪しくなっていくけれど)、途中からGAMEにプレイヤーの一人として誘い込まれてしまうコニーはフラグにしか見えない行動を選び続けるし、留守を任されたハウイーは怪しげなジャズの伯母サマンサに夢中。
コニーもハウイーも、ジャズのためを思って自分にできることをやろうとしているのですが、その単独行動に何度「やめてー!」と叫びたくなったことか。

一般人とソシオパスの境目に立たされるジャズにとって、コニーとハウイーはなくてはならない錨であり命綱であるわけで、だからこそ彼らの安否を思うと手に汗を握ってしまうしかないのです。お願いだからジャズのためにも無事でいて!と祈る思いでページをめくっていました。

特にコニーは完全にターゲットにされていたし、途中でビリーに捕まってしまったときはもうダメだと絶望。あのシーン、シリアルキラーの不安定さが本当に恐ろしかった・・・・・・。

 

そんなコニーとハウイーのスリルある行動のなかで少しずつ明らかになっていくのは、ジャズの出生の秘密とビリーの背後にいる「みにくいJ」の正体、そして「カラスの王」の意味。

やたらと壮大なシリアルキラー史が語られはじめたことには少し首を傾げたのですが、ジャズが親による支配を打ち破るという青春小説としての軸は最後までぶれず、彼の戦いを描き抜いてくれてとても満足しました。

 

自分の生まれを知り、悩み続けた夢の意味を知り、絶望や怒りに心を染めながらも「人は本物だ、人は大事だ」と必死に足掻いたジャズ。
3巻の逃亡劇のなかでジャズの心が闇に堕ちていくかのような描写にはとてもハラハラしたけれど、見事すべてに打ち勝ってくれて本当に良かったです。

でもラストでヒューズ刑事に「ごめん、やれなかった、ごめん」と泣きながら謝るシーンでは思わず涙が・・・・・・。
小さい頃にビリーを止められなかったことへの複雑な気持ちを抱えてきた彼が、ようやく親に立ち向かった果てに口にした謝罪。どうしてジャズが謝らなければいけないんだろう?と思うだけで泣けてしまうんですよね。彼は、本当によく戦ったと思うから。

 

たくさんの犠牲を出した陰惨なゲームの終幕を大団円と呼んでいいのかは分かりません。
それでもジャズがコニーとハウイーのもとにようやく戻ってきたと感じるラストに、とても穏やかに安堵しました。すごく良い読後感。
この3人組があまりにも好きすぎて、誰も欠けなくて本当によかったと思わずにいられません。

 

ジャズと彼の内側に眠る怪物との戦いは終わったのかもしれないし、もしかしたらこれからも続くのかもしれないけれど、最後の一文にくすっと笑ってしまったからきっと大丈夫。

素晴らしい青春小説でした。
聞くところ(訳者Twitter)によると短編集が刊行予定らしいですね。とても楽しみ!!

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