向日葵ちゃん追跡する/友井羊


向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)
向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

評価:★★★☆☆
2016年9月刊。
元ストーカーの防犯アドバイザーが、依頼人の死の謎を追うミステリー。
タイトルからコメディタッチを勝手に予想していたのですが、予想外に内容は重く、予想以上に後味はビターでした。
ストーカーの心理が正面から丁寧に描かれており、理解できてしまうとストーカーというのは哀れな存在なのだと悲しい気持ちに。
誰かを追い詰めるような想いが正しいわけがないけれど、主人公の想いを断罪することも私にはできないというか・・・・・・。
ミステリーとしてもなかなか面白かったし、随所に登場する防犯アドバイスも楽しい1冊でした。
個人的にはラストにもう少し救いがあれば文句なかったのですが、このへんは好みの問題なんだろうなぁ。

☆あらすじ☆
禁止されたはずの恋心。でも、あの人を救いたい! 原向日葵(はらひまわり)は、「おさらぎセキュリティ」ストーカー対策員の19歳。調査では暴走しがちと言われるけれど、自分的にはパンケーキ好きの普通の女子だと思っている。ただ一点、元ストーカーという消えない過去を別にすれば──。接近禁止を言い渡された恋人に殺人現場で再会し、向日葵の運命が再び動き出す。無実の彼を救いたい、でも彼には近づけない。ほろ苦青春ミステリー、疾走開始(テイクオフ)!

以下、ネタバレありの感想です。

 

ストーカー対策専門の防犯アドバイザー・原向日葵
ストーカー被害を訴える依頼人が殺されてしまい、その現場でかつての恋人・佐藤晴馬を目撃した向日葵は、彼の無実を証明するために調査に乗り出す。しかし向日葵にはかつて晴馬にストーカー行為をしたとして接近禁止命令が出ており・・・・・・というストーリー。

 

これを読んでいて思ったのは、訓練されたストーカーは探偵になれるんだな、ということ。またはその逆。

 

SNSに個人情報を無防備に垂れ流すことの危険性がいやというほど分かりました。
向日葵による晴馬の身辺調査の過程で、その手法が懇切丁寧に説明されていくのですが、正直、これなら頑張ればマネ出来るんじゃない? とか思ってしまいました。怖いー・・・。

 

SNSだけでなく、盗聴などに使われるアイテムも予想以上に進化していて鳥肌。
作中で登場するレーザー盗聴器とかもググったら実際にあるようで・・・・・・ほんと怖い。

 

そういった現代的な手法に加え、古典的な変装、監視カメラ入りぬいぐるみ(しかしセンサー付)、詐欺師顔負けの話術などなど、探偵なのかストーカーなのか分からない向日葵の多彩なテクニックが次々と登場していく本作。
怖いと思いつつも、それらの対策まで言及されているので防犯アドバイスとして勉強になるんですよね。とても面白かったです。

 

ストーカーテクニックや防犯アドバイスを披露しつつ、晴馬を調査していく向日葵。
少しずつ現在の晴馬の状況が明らかになっていく一方で、物語はかつて向日葵と晴馬に何があったのかを語っていくのです。

 

なぜ、向日葵は接近禁止命令が出されるほど晴馬をつきまとい追い詰めたのか。

 

事情が明らかになると、「ストーカーって気持ち悪い」と切り捨てるにはあまりにも不憫で健気な向日葵の姿に切なくなってしまいました。
ただ、向日葵が晴馬の心を追い詰められてしまったことも良く分かる。向日葵は期待だけを向けすぎたんだろうなぁ。彼女は彼を癒やす存在にはなれなかったのでしょう。
気持ちがすれ違ってからの向日葵の暴走は行きすぎていましたしね。
向日葵視点だと善意と好意しかなくても、気持ちが離れている恋人にこれをやられたら恐怖しか感じないだろうと私も思う。

 

結局、向日葵と晴馬は恋人として合わなかった、それだけの話なのかもしれません。向日葵の気持ちを考えるととても哀しいけれど。
向日葵によって高められた才能を受け入れるほどの器が、晴馬にはなかったということでもあるのでしょう。才能が大きすぎて潰れることもあるんですね。

 

だからこの結末自体は納得しているんです。でもこれだけだとあまりにも向日葵に救いがない。
途中から怪しい存在になっていった彼がそのまま犯人だったわけですが、これがせめて別の人だったらなぁ。新たな恋の予感に救いを感じることもできただろうに。

 

ラストで涙をこらえる向日葵の姿が印象的でした。
もしシリーズ化するなら、彼女の心を救ってくれるような何かが起こることを期待しています。

 

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