犬恋花伝 青銀の花犬は誓約を恋う/瑚池ことり


犬恋花伝 ―青銀の花犬は誓約を恋う― (コバルト文庫 こ 19-1)
犬恋花伝 ―青銀の花犬は誓約を恋う― (コバルト文庫 こ 19-1)

評価:★★★★☆
2016年9月刊。
2014年ロマン大賞の拾い上げ作品。
和風とアジアがミックスしたような異世界っぽい雰囲気が魅力的のファンタジーでした。児童文学的でとても好み。上橋菜穂子作品の空気に通じるものを感じました。
花に溢れ豊かな自然を感じる世界観のなかで、花犬をめぐる血生臭い騒動や、ヒロインと花犬の哀しいすれ違いが切なく描いた本作。
恋というよりは絆の物語というべきかな。まだまだ奥行きを残した世界観なので、ぜひシリーズ化してほしい作品です。

この凝ってる世界観をちょっと見てみたいという方には、公式サイトの特集ページがおすすめです。

犬恋花伝特集(Webマガジンコバルト)

☆あらすじ☆
人へと姿を変えられる犬─花犬と、花犬を生涯の友として、狩りを行う花操師。17歳の少女コトナは花操師見習いで、相棒の花犬セキとは反目しつつ惹かれ合う。だが、凶悪な花犬が出没する事件が相次ぎ──!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

まず、オリジナリティに溢れた世界観がとても魅力的。

 

狼に似た犬の姿と人の姿を持ち、花を食べて生きる獣・花犬
花犬を友とし、彼らと共に生きる花の民
花の民のなかでは、花を育てる花育人と狩りを行う花操師に分かれていて、花犬に認められた花操師は耳刻という誓約を交わすことで生涯の絆を結ぶ。

 

そんな感じで「花」という言葉がこれでもかと乱舞する本作。
実際にも多くの花々が登場し、花犬たちがもりもり食べたり重要なアイテムになったりするのですが、その一方で、物語の中で描かれるのは「花」という言葉からイメージするような可愛らしい世界ではありません。
花犬と人が時に衝突し傷つけ合いながらも、互いを理解し慰め支え合って日々を生きていく、ある意味泥臭いともいえる物語が描かれていくのです。

 

物語の主人公は、花の民・リンセイ族の少女で、花操師を目指す見習いコトナ
そして、コトナと共に狩りに挑むのは、他部族からの預かり犬・セキ

最後のチャンスである昇格試験を間近に控えているのに、全く息が合わずに反発し合うコトナとセキ。
その原因は、家族同然に大切な花犬・ハルシを殺されたコトナの喪失感にあるわけなのですが、これが本当に切なかった。

死んでしまったハルシのことばかり考えるコトナ。傍にいるのに、自分を見てくれないコトナに苛立つセキ。

癒えない悲しみを抱えるコトナを可哀想とは思うものの、それ以上にセキが感じる寂しさの方に同情的になってしまい、なんとなくコトナを責めるような気持ちで読んでいた気がします。
コトナの革靴をガジガジするところとか、好物を知ってくれたことへの喜びと肩すかしとか、「ハルシじゃなくておれが死ねば良かったのにって思ったでしょう?」とか、得られない愛情を静かに求めるセキが不憫で泣けてくる・・・・・・。
彼の犯した罪を知っても、もう十分報いは受けていると思わずにいられませんでした。

 

あまりにもコトナとセキのすれ違いが切なすぎて途中は読むのが辛くなるほどだったのですが、それだけにクライマックスで心を通じ合わせてからの共闘に興奮してしまいました。
ようやくセキ自身を見たコトナの、終盤の奮闘は本当に素晴らしかった。あきさんの挿絵も凜々しくて素敵。こういうカタルシスは最高ですね。

 

物語を通して、本当の意味でパートナーになっていったコトナとセキ。
恋というよりは相棒としての絆の物語って感じでしょうか。というか、花犬と人って恋愛できるものなの?っていう疑問が最後まで残ったんですよね。セキの感情も恋なのかどうかは微妙な気がしますし。

個人的には、この作品にそういう色恋方面はいらないかもなぁ。唯一無二、そして生涯にわたる信頼と親愛の物語として見ていたい。

 

さて、1冊で素晴らしい物語を仕上げてくれていますが、シリーズ化はするのでしょうか。
単巻ものでも良さそうだけど、護王士あたりの設定をもう少し掘り下げてほしい気もする。

どちらにせよ、実力を感じる新人さんなので今後の活躍に注目していきたいと思います。

 

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「犬恋花伝 青銀の花犬は誓約を恋う/瑚池ことり」への2件のフィードバック

    1. ちゃーこりんさん、コメントありがとうございます。

      シリーズが続いて世界観をうまく広げれば、名作になるんじゃないかと期待していますw

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