だからお兄ちゃんと呼ぶなって!/桐山なると


だからお兄ちゃんと呼ぶなって! (ファミ通文庫)
だからお兄ちゃんと呼ぶなって! (ファミ通文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2016年8月刊。
記憶喪失の少年が、熱烈に愛してくる見知らぬ妹に動揺しつつ、失われた記憶を取り戻そうとする兄妹コメディ(?)。
コメディでいいのかな。記憶のない主人公を揺さぶる違和感が随所で不気味な空気を生んでいて、それが本作をコメディと断じることを迷わせるんですよね。
この巻も普通に面白かったけれど、こういうタイプの作品は物語の結末次第で評価が変わりそうな感じ。
今のところ面白いですしラストでゾクッとさせてくれたので、期待を裏切らない続刊を待っています。

☆あらすじ☆
目を覚ますとそこには息を呑むような美少女。そして彼女は、「お兄ちゃーんっ!」と俺に抱きついてきた! 誰なんだこの子? いや俺は――。どうやら俺こと蓮杖アキは、事故によって記憶を失ってしまい、萌々と名乗るこの少女は俺の妹なのだそうだ。しかし、記憶を取り戻させるためと俺を襲うのは、過剰なまでの妹の愛! しかも記憶を失くす前の俺は、萌々よりヤバい兄だったようで!? 思い出すのが恐ろしい、記憶と絆を辿るドメスティックラブコメ!

以下、ネタバレありの感想です。

 

主人公は記憶喪失の高校生・蓮杖アキ
今の彼にとっては見知らぬ周囲の人々によって、アキは「記憶を失う前の自分」の痕跡を少しずつ辿っていく、というのが本作のストーリーとなります。

 

記憶がない空っぽの状態で、「君はこういう人だったんだよ」って言われるのはどれくらいの恐怖なんだろう。

名前を聞いても、家に帰っても、学校に行っても、何一つ思い出すことができないアキ。
「かつての蓮杖アキ」の酷すぎる素行を見聞きしても、ドン引きこそすれ全く記憶につながらないアキ。

彼の中で徐々に膨れあがる違和感と共に、読者である私もまた「この『蓮杖アキ』って本当に記憶を失う前の主人公なのか?」と首を傾げてしまいました。
容赦なくアイデンティティが揺さぶられることで生まれる不穏で不気味な空気が、ノリの軽い妹ラブコメの皮をかぶった本作の裏側でずっと蠢いているんですよね。その明暗の落差がとても楽しい作品でした。

 

さて、主人公が忘れてしまった『蓮杖アキ』とはどういう人物なのでしょうか。
主人公の「俺」が「蓮杖アキ」であることは、学校でそのように認識されている以上、間違ってはいなさそう。
同様に、アキに対して謎の「兄妹の常識」を振りかざす妹・萌々もまた「妹」であることは間違いなさそう。

でも、それ以外の全てがどうにも疑わしい。

記憶を失う前のアキと萌々が本当はどんな関係だったのか、あるいは何が原因でそんな関係になったのか、が今のところ最も気になるポイントです。なんといってもラストでアキが発見したメッセージが怖すぎですからね・・・・・・あのシーンまでは少し疑いつつも仲良し兄妹だったと信じそうになっていたのに。仲直りにちょっと感動したのに。

 

他にも、真咲が屋上に言った謎のセリフとか、事故の後処理を引き受けた新屋先生とか(兄妹に保護者はいないのか?)、周囲のキャラも何だか気になる感じ。
加えて、萌々が自分の部屋を隠しているのも彼女の普段の言動からちょっと浮いてるように感じていたし、喧嘩の途中から一人称が変わったのも引っかかります。

 

色々と気になりすぎて落ち着きません。
こういうタイプの話はあまり引き伸ばされるとハードルが上がってしまうのですが、それを乗り越える結末が待っていてくれるでしょうか。
期待しながら2巻を待ちたいと思います。

 

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