さよなら、シリアルキラー/バリー・ライガ


さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)
さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2015年5月刊。
最悪の殺人鬼を父に持つ少年が、街で起こった連続殺人事件の謎を追うミステリ。
殺人の英才教育を受けて育ったために、誰よりも自分自身を恐れ疑ってしまう少年の葛藤を描く青春小説でした。
少年の繊細な内面を深く深く掘り下げていくところに読み応えがあり、そのウェットな雰囲気が実に好み。
彼を取り巻く周囲の人々との関係性も魅力的だし、ラストのオチにはゾクゾクしました。
三部作の1作目ですが、この続きもとても楽しみです。

☆あらすじ☆
ぼくには連続殺人犯の血が流れている。ぼくには殺人者の心がわかる――ジャズは高校三年生。田舎町ロボズ・ノッドではちょっとした有名人だ。ある日町で衝撃的な事件が起きた。指を切りとられた女性の死体が発見されたのだ。連続殺人だとジャズは訴えたが、保安官はとりあわない。だが事件はそれだけでは終わらなかった。なぜジャズには確信があったのか。それは彼が21世紀最悪といわれる連続殺人犯の息子で、幼い頃から殺人鬼としての英才教育を受けてきたからだった。親友を大切に思い、恋人を愛するジャズは、内なる怪物に苦悩しつつも、自らの手で犯人を捕まえようとする。全米で評判の異色の青春ミステリ。

以下、ネタバレありの感想です。

 

21世紀最悪の殺人鬼を父に持ち、彼から殺人鬼としての英才教育を受けながら育った高校生ジャズ
ある日街で起こった殺人事件が連続殺人事件であることを見抜いたジャズは、自ら事件に積極的に介入していこうとする、というのが本作のストーリーです。

 

父から施された教育を活かして犯人像をプロファイリングし、次なる被害者を救おうと奔走するジャズの活躍ぶりはまさしく高校生探偵といった感じ。
しかし本作で面白いのは猟奇殺人事件の謎解きというミステリそのものよりも、探偵役であるジャズ自身が殺人鬼と一般人のボーダーラインをふらふらとし、そんな自分に恐れ戸惑う彼の繊細な心理描写でした。

 

自分は普通の人間でいられるのか。
それとも、父が創りだしたソシオパスとして、いつの日か殺人の衝動に負けてしまうのか。

親友ハウイーや恋人コニーに対する愛情にすら頻繁に疑問を抱くほど、自分自身を信じることができないジャズ。
死体をモノ扱いしたり悲しみに共感できなかったりと普通の人間的な感覚からは遠い一方で、相手の思考をトレースできるほどに殺人鬼の心にはとても近い。
そんな自分を自覚しているからこそ、不安に心を苛まれていくジャズの繊細な心を動きに魅入られてしまいました。
情緒的な描写がたまらなく好みだし、ああジュブナイルを読んでる!っていう感じがとても心地良い。
精神構造が少し特殊ではあるけれど、思春期におけるアイデンティティの揺らぎと確立の描き方がまさにティーンエイジャーが主人公の青春小説なんですよね。良い・・・・・・。

 

いつ殺人鬼として道を踏み外してもおかしくないジャズ。
不安定な彼を普通の高校生としてつなぎ止めるハウイーやコニーの存在がまた素敵。
ともすればウジウジと湿り気が強くなりすぎるジャズの悩みを、窓を開けて空気を入れ換えるかのように吹き飛ばしてしまうハウイーとコニー。その優しさと、愛のある厳しさがとても眩しくて、こういう関係性に憧れてしまいます。
無茶をするジャズの共犯になるけれど、同時に彼のストッパーにもなってくれる存在。彼らがいる限りジャズは大丈夫だという安心感があるんです(これがフラグにならないといいけれど)

 

そんな感じで青春小説として面白い作品でしたが、ストーリー的にはこれからが本題という感じ。
この1巻だけでもジャズは自身の内側に潜む父親の影に苦しめられていましたが、今後はもっと直接的に父と対峙していくことになるのでしょう。
ラストはやっぱりそうくるか!という楽しい展開に入ったので、次巻もとても楽しみです。

 

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