玉依姫(八咫烏シリーズ5)/阿部智里


玉依姫
玉依姫【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2016年7月刊。
毎巻ガラッと作品の雰囲気を変えてくる八咫烏シリーズの最新作。
いよいよ現代日本と山内の世界がリンクし、これまでの伏線についても回収が始まりました。
そして今回の物語で重要な位置にいるのは八咫烏たちではなく、村の因習に巻き込まれた女子高生。
少し外伝っぽさを感じつつも現代伝奇譚な雰囲気が新鮮。今回も安定して面白かったです。

☆あらすじ☆
生贄伝説のある龍ヶ沼と、その隣にそびえる荒山。かつて、祖母が母を連れて飛び出したという山内村を訪ねた高校生の志帆は、村祭りの晩、恐ろしい儀式に巻き込まれる。人が立ち入ることを禁じられた山の領域で絶対絶命の志帆の前に現れた青年は、味方か敵か、人か烏か―

以下、ネタバレありの感想です。

 

祖母と母の故郷である山内村を訪れ、そこで人身御供として山神に捧げられてしまった女子高生・志帆
赤子の状態の山神の母親役を押しつけられた志帆は、一度は逃げたものの自分の意思で山神の母となることを決意し・・・・・・という感じに話が進んでいく第5巻。

 

基本的には志帆と山神・椿の物語であり、今まで主役を張っていた八咫烏は脇役。
名前が出てくるのも奈月彦とますほ(真赭の薄)だけという徹底ぶりです。他の烏もその場にはいそうでしたが。途中で山神の攻撃を受けて傷ついたのはもしや明留?

 

そうして奈月彦たちを一歩下げつつも、世界観については更に掘り下げが進み重要な伏線も回収されていくことに。
前巻で語られた那律彦と山神の確執について明かされたし、これまでのシリーズの舞台だった「山内」という世界の意味も語られましたしね。四領の特徴の意味とか、八咫烏の正体とかなるほどなぁ!と感嘆しました。これ、デビュー作の時からぎっちり設定を詰めて考えていたのならすごいな。存在だけは語られていた天狗もようやく登場しましたしね。

 

犠牲を生み出す山神を討伐する方向に話が進んでからは現代伝奇譚の様相が強くなっていくのですが、これがまた楽しかった。
元々「八咫烏」の物語ではあるけれど、ここで日本神話的な世界観を広げるとはニクい演出ですね。いったん人間サイドに話を置かないことには出てこない設定だろうし、シリーズ構成の妙を感じます。
それに山神のルーツを求める考察とかワクワクしましたしねw こういうの好きなんだよなぁ。

 

そんな世界観全体への説明を進めながらも、メインストーリーは志帆と椿の母子の物語。
カムバック以降の志帆の肝の据わり方や優しさに好感を持ちつつも、彼女の意思について疑問が挟まれる薄ら寒い展開にはハラハラしました。結局、どこまでが志帆の決断だったのかについては、ラストのタネ明かしが済んでからも微妙にスッキリはしなかったなぁ。
ただ、志帆の異常性(「普通」からズレているという意味で)は最初から語られていたことだし、玉依姫という存在は彼女にとってとても馴染むものだったのでしょう。だから「玉依姫」と「志帆」は両立して共存できると考えるべきなのかも。変わったけれど同じってことなのか。
それに、裏切られ傷ついて狂いかけていた椿が、志帆の優しい愛情に癒やされて更生していく姿を好ましく思っていたので、この結末自体は私は好きです。というか、このラストのふたりだけの世界(獣はいるけど)って感じの寂しいけれど胸がぎゅっとなるような余韻の残し方がたまらなく好き・・・・・・。

 

そういえば、最終的に見た目年齢に違いがなくなったのだけど、この先もずっと母子の関係でいるのでしょうかねー?
途中で出てきた玉依姫の逸話で、養い子と結婚したエピソードもあったんですけど志帆と椿はどうなるんですかね。ちょっと期待。

 

というか、そもそも志帆と椿は今後も登場するのでしょうか。
今回で山神の存在そのものにひとつの決着がついたわけですが、一応、八咫烏はこのまま神使でいるのかな。次の巻はまた八咫烏メインの話に戻りそうですが(いよいよ大猿と決着か)、椿にも出番がほしいものです。

 

そして巻末予告をみると来年7月に発売予定の次巻で第一部完結とのこと。
第一部ということは第二部があるんですよね?
今後の展開も楽しみです!

 

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