蒼空時雨/綾崎隼


蒼空時雨 (メディアワークス文庫)
蒼空時雨 (メディアワークス文庫)

評価:★★★★★
2010年1月刊。
第16回電撃小説大賞「選考委員奨励賞」にして綾崎隼さんのデビュー作。
めちゃくちゃ面白かったです。
一人暮らしの男のアパートにワケあり美人が転がり込んでくるところから始まる、雨の風景がとてもよく似合う恋愛群像劇。
少しずつ繋がりがある5人の男女の恋を描いていて、登場する誰もが人間的にダメなところがあるというか、痛々しいところがあって、全てひっくるめて愛おしくて仕方ありませんでした。
もうほんとにこういう話大好物すぎて叫びだしたい気分。

☆あらすじ☆
偶然の「雨宿り」から始まる、切ないラヴ・ストーリー。ある夜、舞原零央はアパートの前で倒れていた女、譲原紗矢を助ける。帰る場所がないと語る彼女は居候を始め、次第に猜疑心に満ちた零央の心を解いていった。やがて零央が紗矢に惹かれ始めた頃、彼女は黙していた秘密を語り始める。その内容に驚く零央だったが、しかし、彼にも重大な秘密があって…。巧妙に張り巡らされた伏線が、いくつも折り重なったエピソードで紐解かれる、新感覚の青春群像ストーリー。

以下、ネタバレありの感想です。ネタバレなしの方が楽しい作品なので未読の方は要注意。

 

雨宿りという口実で初恋の相手舞原零央のアパートに転がり込み、なし崩し的に居候を始めた譲原紗矢
彼女がなぜ自分のもとに現れたのかを知りながら、とある秘密を隠していた「舞原零央」

そんな2人の同居話から始まり、少しずつ関係がつながっている5人の男女の恋を描いた青春群像劇でした。

 

第二話で語られる紗矢の半生があまりにも壮絶すぎて、ここまできつい人生を頑張って生き抜いたんだからせめて初恋だけはどうか実って・・・!と祈らずにはいられませんでした。

 

それなのにまさかのどんでん返しに絶句。
一度、本を閉じてクールダウンさせられるほどびっくりしました。
というか最初に年齢ひとつ違いじゃんって気づいていたのに「舞原零央」の正体に驚いた私は一体・・・・・・。

 

いやでも仕方ないですよね。だってそこを間違えるなんて思わないじゃないですか。
まぁこの最初の勘違いは紗矢の零央に対する想いの正体をほのめかしていたのかなぁ。
結局彼女の初恋は辛すぎる人生の中で唯一の優しい心の拠り所になっていて、ある意味ではそれだけの話だったのかも。恋を勘違いしたとか言いたいわけじゃないんですけど、なんというか最初の想いがどれだけ恋心として彼女の中に残っていたのかは疑問だなぁと思って。彼との同居生活を通して優しい思い出を必死に抱きしめる必要がなくなっていたのではないでしょうか。零央には残念なお知らせですが。

 

とはいえ、彼女の勘違いを放置して助長させた朱利は明らかに許されないし酷い話だとは思いますけどねw
朱利は本当に嘘つきな男だし、後半の嘘もずるすぎだろって殴りたくなりました。紗矢はもっとぶん殴って良い。
でもそういう情けないところが妙にキュンとしてしまうのは何故なんだろう・・・・・・。

 

そんな紗矢、朱利、零央の三角関係話の間に挟むかたちで、彼らと浅くはない関係をもつ風夏夏音の姉妹の恋も描かれていく本作。
風夏については性格が苛烈すぎて最初あまり好感をもてなかったのですが、終盤で零央の相談にのっているときと朱利にお説教かましているときの姉御肌なところは気に入りました。

一方の夏音の恋の話はボロ泣き。
誰にも話せない上に、タイムリミットさえある夏音と稜の恋。
こういう病気絡みの悲恋は正直苦手なのですが、最後の手紙に胸がいっぱいになりすぎて・・・・・・切ないけどロマンチックすぎて憎い。

 

結局、主要登場人物の誰もが人間的にダメなところを抱えていたってことですよね。
全員「おいおい、それは人としてどうなの・・・」と思っちゃうことをやらかしてるのが笑える。
そんな痛々しいところがたまらなく可愛くて、最後に5人が揃ったシーンの賑やかさと温かさに心が満たされていくようでした。

 

しっとりとした雨の風景がとても似合う物語だけど、最後は雨上がりの蒼空のような爽やかさに包まれて読了。
とても気持ちの良い作品でした。
引き続き花鳥風月シリーズを読んでいく予定です。

蒼空時雨 (メディアワークス文庫)
綾崎 隼
アスキーメディアワークス

 

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