その10文字を、僕は忘れない/持崎湯葉


その10文字を、僕は忘れない (ダッシュエックス文庫)
その10文字を、僕は忘れない (ダッシュエックス文庫)

評価:★★★★☆
2016年7月刊。
一日に10文字しか喋れない少女と、偶然に彼女の事情を知った少年の恋を描いた青春小説。
スケッチブックを経由する言葉のやりとりがくすぐったくて良い。甘酸っぱいやりとりの中で、彼女の心の傷に触れながら少しずつ近づいていく二人の関係性がたまらなく愛おしい作品でした。
ヒロインの持つハンデに絡めながら、誰かに恋をするということを率直に描いた王道のラブストーリーだと思います。
終盤のシーンはベタながら清々しくて最高にきゅんとしました。とても素敵な恋の話を読めて大満足です( *’w’)

☆あらすじ☆
ある日学校をサボった俺は、雨よけに寄った公園で、びしょぬれの女の子に会った。名前は宮崎菫。彼女は、話すことができない。声が出ないのだ。言葉をしゃべれずスケッチブックで会話をする彼女は、クラスでも浮いている存在だった。気まずい雰囲気の中、かかげられたスケッチブックに躍る文字。「春は好きですか?」不器用でも一生懸命にコミュニケーションを取ろうとしてくれる菫に、俺はやがて惹かれていった。菫はまったく話すことができないわけではなかった。彼女は”一日に10文字しかしゃべれない”のだ。「ありがとう」も、「ごめんさい」も、「嬉しい」も、「大好き」も。大切なことは10文字でみんな伝えられるって、そう思ってた。 でも、菫に課せられた症状には、あまりにも優しくて悲しい過去が秘められていたんだ――。声を失った少女と、無気力な少年が贈る、10代の煌めく青春ラブストーリー。

以下、ネタバレありの感想です。

 

クラスメイトの宮崎菫と雨の公園で偶然に居合わせ、話すことができないと思っていた彼女が10文字だけは話せるということを知った高校生・島崎蒼
それをきっかけに菫と交流を始めた蒼は、彼女への恋心を募らせる一方で、菫の抱える心の傷を知っていくことになるというのが本作のストーリーです。

 

1日に10文字しか喋れない菫のコミュニケーション手段はスケッチブックでの筆談。
スマホでやり取りすればいいのでは? と一瞬思ったものの、菫の書く文字は時として彼女の感情をうまく表現していて、それがまた甘酸っぱかったりハラハラしたりと良いアクセントとなっていたと思います。
照れると文字は小さくなり、焦れば走り書きになり、怒れば激しい字になり・・・・・・むしろスケッチブックそのものも感情表現の手段になったりしてましたしね(主に武器や八つ当たり先として)
喋ることができなくても菫の感情はとても豊かで騒がしくて元気いっぱいなんだなぁ、と思うとほっこりした気持ちになります。それを引き出したのが蒼なのだと思うと、二人の関係性に更にあたたかい気持ちになるのです。

 

とはいえ、菫が感情を豊かに表現できるようになるまでには紆余曲折があり、彼女の心を傷つけた過去の出来事や、それを乗り越えさせようとする蒼の奮闘があるわけですが。

 

そんな感じで菫の心の傷に蒼が寄り添い、少しずつ彼女を癒やしていく姿の甘酸っぱさに浸れた前半。
しかし後半、菫の心の闇をようやく払うことができたのかと安堵したところで再び二人の関係に暗雲が立ちこめていくのです。

 

ある出来事をきっかけにして蒼の脳裏にこびりついた疑惑は、言ってしまえばどうしようもなく青くさい悩みなのかもしれません。
けれど、ハンデを持つ彼女への想いを純粋な好意だと揺らがないでいるには、大人の勝手なレッテル貼りは高校生の彼には重いものだったのでしょう・・・・・・。

 

この恋は本当に恋だったのか、なんて言葉にしてしまうとムズムズしてしまう疑問。
けれど、「彼女と出会ったのが自分でなければ」「彼女を救ったのが自分でなければ」なんて、答えのないifを割り切れずに思い悩む姿はまさに青春といえるのではないでしょうか。こういうの好きすぎてたまらない・・・・・・!

 

悩んで悩んで、そうして辿り着いた応えもまたド直球。
不純物を全部取り除いて残ったものが恋心だとか、これを純愛と呼ばずに何と呼ぶのでしょうか。
照れるくらいベタだけど、それだけに素直に胸に響くラストシーンだったと思います。

 

本当に素敵な青春恋愛小説でした。
サブカップルがさりげなく成立していたのにちょっと笑ったw

持崎さんの次回作も期待しています!

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「その10文字を、僕は忘れない/持崎湯葉」への2件のフィードバック

    1. ちゃーこりんさん、コメントありがとうございます。

      単巻モノだと思います。とても綺麗に終わっているので(^o^)

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