魔獣調教師ツカイ・J・マクラウドの事件簿 獣の王はかく語りき/綾里けいし


魔獣調教師ツカイ・J・マクラウドの事件録 獣の王はかく語りき (Novel 0)
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評価:★★★☆☆
2016年7月刊。
人間が魔獣を飼育し、繁殖させ、娯楽として扱う帝都を舞台にしたダークファンタジー。
そこはかとなく悪趣味で退廃的な雰囲気に圧倒されてしまう物語でした。
謎めいた腕利きの魔獣調教師を中心として、魔獣と人間の暗い関係性を連作短編となっていいます。
かなり陰惨ですが、ついつい読んでしまう暗い魅力を感じる作品だと思います。

☆あらすじ☆
帝都最高の魔獣調教師『絢爛なる万華鏡』ゴヴァン卿の奇妙な死とともに彼の全てを継承した青年・ツカイ。とある【魔獣愛好倶楽部】で彼に出会ったウヅキは、彼に纏わる魔獣事件を経て彼の真実に迫っていくが……?

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の中心に立つのは2人の男性。
ひとりは、顧客の要望に完璧に応える帝都最高峰の魔獣調教師「獣の王」ツカイ
そして、持ち前の好奇心の強さと警戒心の少なさが背中を押す形でツカイと交流を深めていく医者のウヅキ

 

物語は特権階級の娯楽である「魔獣」という存在を鍵として、人間と魔獣の関係性を様々なストーリーによって描き出していきます。
ここで出てくる「魔獣」は造形が美しくもグロテスク。それを飼う人間は内面が悪趣味で醜悪。そのコントラストが目を惹く物語でした。

 

魔獣との関係は「奴隷」か「王」しかないとツカイは言うけれど、作中で出てくる魔獣を飼育する人間のほとんどは「奴隷」にしか見えないんですよね。
「王」はツカイひとりを指すのだとしたそれも当然なのかも。
「王」であるツカイにとって「奴隷」は歯牙にかける存在ではなく、ウヅキやエマのような「人間」だけが彼にとっての敵となりうるというのも何か分かります。格が違うというか。

 

「人間」といえば、なにげに一番酷いエピソードだった「ヘイベック地下劇場の罠」のヘイベックも「人間」だったのかも。魔獣にのめり込まず「奴隷」とはならないという意味で。
完全に魔獣を商売道具としてみていた彼が、彼の観客たちよりも「人間」だったというのはなんとも皮肉っぽい。

 

色々と醜悪でおぞましい「奴隷」がたくさん出てくる一方で、主人公であるツカイがそれを超越するくらいエグいキャラクターでちょっと胸焼けがしてしまいましたw
これもダークヒーローになるのかな?
ちょっとピカレスク・ロマン的なところはある気がします。
最後の章で明らかになる彼の背景を知ると極悪人だと断じるのは躊躇してしまうけど、やってることエゲつないし、やっぱり極悪人だなぁと思うところとか。

こんなツカイには、この先、破滅だけが待っているのでしょうか。
それを彼につきつけるのは、エマやウヅキになるのかな。ウヅキとの「今」の関係がどこまで続くのかドキドキしますね・・・!

 

物語の終着点がどういうものになったとしても、今しばらくはこの暗鬱な物語を読んでいたい気分です。悪趣味だけど、なんだかのぞき込みたくなる不可解な魅力がある作品だったので・・・・・・。
というわけでシリーズ化に期待しています。

 

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