ハルコナ/秋田禎信


ハルコナ (新潮文庫nex)
ハルコナ (新潮文庫nex)

評価:★★★☆☆
2016年6月刊。
存在するだけで花粉症を抑える特殊体質の少女と、普通の生活ができない彼女をサポートする少年。
少女の存在が原因となって起こった騒動に巻き込まれていく少年が、迷い悩みながらもひとつの答えを導き出すまでを描く物語です。
なんだろう。一言でうまく言い表せないのですが、ちょっと不思議な読み味の青春小説でした。あと結構風刺がきいていた印象。

☆あらすじ☆
5年前、遠夜の隣に引っ越してきたハルコは特異体質の少女。数十キロにわたり花粉を消滅させるかわりに自分には有毒となるため、宇宙服のような防護スーツを着けなければ外出ができない。通学は遠夜がサポートを続けるなか、事故が起きる。それはクラスメートを巻き込む事件へと発展するのだが。―世界を敵に回してもハルコを守りたい、と願う17歳の決意が迸る圧倒的青春小説!

以下、ネタバレありの感想です。

 

対抗花粉体質という、存在するだけで周辺の花粉の機能を変え、花粉症から人々を解放させる特殊な体質を持つ少女・ハルコ
しかし本人にとって花粉は猛毒であり、防護スーツなしに外出さえままならないハルコのサポートをするのが同級生の少年・遠夜

 

物語は、ハルコ(というより対抗花粉体質者?)への悪意から始まり、悪意が広がって、蔓延していくなかで、その中心にある遠夜の心の変遷を描いていきます。

 

対抗花粉体質をめぐる、反対勢力との小競り合いとか、そこから悪意的な衝動が連鎖していくとか、なかなか風刺がきいている物語だったように思えました。

 

でもまぁそれはさておき、私が気になったのはハルコのこと。
「ハルコといたい」という想いだけで行動する遠夜の目から描かれる物語は、たしかに純愛小説だし青春小説なんだけど、その割には相手方であるハルコの存在感って微妙に薄かったんですよね。

 

騒動の中心にいるはずなのに、一歩ズレた場所にいるような錯覚を覚える不思議な距離感。
誰も彼もハルコを巡る自分の考えを高らかに訴えるけれど、ハルコにどこまでそれが届いているのか首を傾げてしまうような違和感。
もちろん嫌だなぁとかしょんぼりしているシーンもあるんですけど、なんだろう、彼女を見てると「それだけ?」って肩すかしを食らっちゃうような感じがあるんです。

 

ハルコにとって外の世界というのはどういう風に見えているのだろう?

 

防護スーツの中にいるハルコは、言葉も電話越しじゃないと交わせないし、マジックミラーのせいで表情も分からない。
遠夜ですら、帰宅後のSNSでようやくスーツの中にいるのがハルコだと実感できるくらいですから、スーツを着ているときのハルコの「本当にハルコはそこにいるの?」感は尋常ではないのです(たまに存在が伝わるシーンがあってホッとするほど)。
そういうわけで、事態が騒がしく動く一方で、肝心のハルコの感情は色んな意味でほとんど見えてこない。
これがまた不思議な読み味となっていたように感じました。

 

自分の身体の一部たりとも触れることはない外の世界。相手から見えない窓の向こうに広がる世界。言葉すらも電波を解さないと届かない世界。
それって、リアルを感じることができる世界なのでしょうか。
ハルコにとってリアルを感じられるのは、生身で会うことのできる家族と遠夜だけだったんじゃないだろうか。

「わたしは前と変わらない」「遠夜君も、わたしのスーツに入っちゃった感じかな」

このセリフをみたとき、そんなことをつらつらと考えてしまいました。
遠夜はハルコが罵声で傷つかないように気を張っていたけれど、彼が思うほどハルコは深く傷ついてたのかな?
むしろ彼女の心が一番ハッキリと動いていたのは、遠夜がハルコをしっかりと見て話して触れあっているときだけだったような・・・・・・。

 

うーん、結局のところよく分からない。混乱した感想ですみません。でも不思議なスルメ的味わいのある純愛小説だった気がします。
「隔離室と防護スーツ越しの純愛小説」って帯には書いてあったけど、これって心の距離感のことだったのかな。
だとしたら、ラストで、スーツを越えて一緒に中に入った2人の姿はこれ以上ないほどにハッピーエンドだったのかもしれませんね。

 

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