幻獣調査員/綾里けいし


幻獣調査員 (ファミ通文庫)
幻獣調査員 (ファミ通文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2016年6月刊。
人外×少女ってだけでもジタバタするのに、さらに水棲馬とか人魚とか妖精猫とかがたくさん出てくる旅ファンタジーとか、これもうめっちゃ好きなやつですね!!
うまく共存できるときもあれば、時に激しく衝突する幻獣と人の関係。
その間に介在する幻獣調査員の旅路を描く幻想的なフェアリーテイルでした。
残酷さに悲しくなる話もあれば、可愛らしさに頬が緩む話もあって、その多様な物語性に心が惹かれます。
そして何より幻獣調査員フェリとその従者たちが本当に素敵。
マスコット蝙蝠も可愛いけれど、人外×少女の切なくて愛しい関係に胸がいっぱいになるのです。
一応読み切り予定の作品だそうですが、これはぜひシリーズ化してほしい!

☆あらすじ☆
幻獣のいる世界――それは恐ろしく、美しく、そして愛おしい。
村を襲うも人は殺さない飛竜の真意とは。老人の巻きこまれた妖精猫の裁判の行方は。鋭い吠え声が響く村で娘達を食らう獣の正体とは――。独自の生態と超自然の力を持つ生き物、幻獣。謎多き存在である彼らと人の衝突が増えたため、国家は幻獣を調査し、時には駆除をする専門家を定めた。そのひとりである調査員のフェリは「人と幻獣の共存」を胸に、世界で唯一の幻獣書を完成させるため旅を続けている。これは、人と幻獣の関わりが生む、残酷で優しい幻想幻獣譚。

以下、ネタバレありの感想です。

 

ドラゴン、バジリスク、ケット・シーなど、独自の生態系を持つ超自然的な生物・幻獣
その専門家として各地を旅し、人と幻獣の間に入ってトラブルを処理していく幻獣調査員

 

物語は幻獣調査員フェリが、従者である「闇の王様」クーシュナと可愛い蝙蝠トロと共に旅をし、その旅路の中で様々な人や幻獣と出会っていく姿を描いていきます。

 

連作短編形式の物語ですが、どのエピソードもとても面白かったです。

『飛竜と娘』『マーメイド』では人の都合を押しつけられる幻獣の悲しみに胸が痛くなったり、理解し理解されることの難しさに悩ましい気持ちになりました。
『水に棲む馬』では、人と幻獣の敵対関係が復讐譚という形で悲しく綴られ、幻獣の脅威を再確認。
『ランカンスロープ』では人の身勝手さに辟易し、人と幻獣の間に立つ存在の苦しみと末路に泣けてきて。このエピソードはフェリ自身の物語にも深く関わっていたのですね・・・・・・。

そうして幻獣と人の共存の難しさを描いたかと思えば、『バジリスクの卵』では知識さえあれば幻獣は怖くない(こともある)ことを描き、『妖精猫の裁判』では可愛らしい猫たち(とフェリ)にほのぼのとしてしまいました。『子ども部屋のボーギー』はトローの愛くるしさが限界突破。
幻獣と人の理想的な隣人関係がそこにはありました。全てにこんな優しさがあれば良いのに。

 

「人と幻獣の共存」というフェリの理想の難しさと、その理想の優しさが詰まったエピソードの数々。
時に悲しい物語もあれば、時に楽しい物語もあって、そのバランスが実に巧かったと思います。

 

そんなフェリとクーシュナたちの物語の合間に挟まれるのは、「闇の王様」の昔話。
おとぎ話風に少しずつ語られる物語のなかで、ゆっくりと少女に心を開いていく王様の姿にすごくときめきました。
ああ、こうして彼の孤独は終わって賑やかな旅が幕を開けるのだな、と思うと彼の「今」の姿を思い出してニヨニヨするのです(*´w`*)
ただでさえ、フェリを「我の花」と呼んで守るクーシュナと、クーシュナに絶大な信頼を寄せるフェリの関係にゴロゴロしていたのに。こんなエピソードが根底にあったと知ったら更にゴロゴロするしかないww

 

それだけに、続く『旧き竜の狂気』のエピソードで全身から血の気が引いたのですが。

 

なんでこんなことに!?と大パニックですよもう・・・・・・。
ほんとびっくりした。完全にタイトルの数字を見落としてた。
そして明らかになるフェリの正体にびっくり。

 

こういう話を全部踏まえてからクーシュナの言動を振り返ると、あまりにも切なくて胸が痛くなります。
クーシュナを中心に物語を見つめ直すと、一番最後の一文に泣きたくなるような愛しさがこみ上げてくるんです。
本当、悲しいくらいロマンチックな関係。
この幻想的な物語のラストを飾るに相応しいエピソードだったと思います。素晴らしかった。

 

一応、読み切りを予定されているとのことですが(あとがき談)、是非ともシリーズ化してほしいなぁ。
理想のために突き進むフェリと、文字通り影となってフェリを守るクーシュナと、可愛らしく二人に寄り添うトローの旅がもっともっと見たい!

幻獣調査員 (ファミ通文庫)
綾里 けいし
KADOKAWA/エンターブレイン

 

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