風見夜子の死体見聞/半田畔


風見夜子の死体見聞 (富士見L文庫)
風見夜子の死体見聞 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2016年6月刊。
第3回富士見ラノベ文芸大賞「金賞」受賞作。
「未来の死体」を見ることのできる少女が、その死を回避するために奔走する物語。
「未来の死体」の状態から逆算していくアプローチは面白いし、主人公とヒロインの噛み合ってないのに軽快な会話も楽しい作品でした。
エキセントリックなヒロインと彼女に振り回される主人公っていう構図、好きなんですよね。絶交していた幼なじみの復縁ものとしても良かったです。
もう少しヒロインの内面を丁寧に掘り下げてくれていたらなお良かったのですが、そこらへんは続刊に期待したところ。
語り口も好みでしたし、今後に注目していきたい新人さんです。

☆あらすじ☆
彼女には人の未来の死が見える。少年少女の未然系青春ミステリー
死神とあだ名されるクラスメイト風見夜子に、凪野陽太は声をかけられた。「あなた死ぬわよ」“これから死ぬ人の姿が見える”という夜子の、悲劇を回避するための過激な人助け――死体見聞に陽太は巻き込まれ……!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

小学生以来絶交していたクラスメイト風見夜子に、ある日突然に死を宣告された高校生・凪野陽太
交通事故に遭った凪野の「未来の死体」を見たのだという夜子の言葉を当初は信じなかった凪野だが、彼女の予言通りの状況で事故に遭いかけたところを夜子に救われる。
それをきっかけに凪野は夜子の「死体見聞」に強制的に付き合わされることになり、彼女と共に「死」を回避するため奔走することになる、というのが本作のストーリー。

 

街中で「未来の死体」を見つけるたびに、それを消すため動き出す夜子と凪野。

車の通れない狭い路地で何かに押し潰されたかのように死んでいる小学生の兄妹。
黒いレバーを握りしめて壁に叩きつけられて死んでいる同級生。
これから犯罪を犯すはずだったのに刺殺されている連続殺人犯。

様々な「未来の死体」の状態からタイムリミットを逆算したり、死体の状況から何が起こるのかを推測したりして、どうにかその状況が生まれないように奮闘する夜子たち。
しかし何をやっても予知された状況に向かって動き始める人々に「本当に未来を回避できるのか」とハラハラさせられました。

 

まぁ、事がうまく運ばないのは8割方は夜子の残念なコミュ力のせいなのですが。
夜子の見る「未来の死体」はあくまで可能性にすぎず、頑張れば簡単に変えることができるもの。
夜子の対応のマズさが思惑と反対の方向に背中を押してしまうというのが笑えない(けど笑える)。
段取りを踏まないから怪しまれて不気味がられてしまうんですよねぇ。
段取りを踏んでも信じてもらえる話ではないかもしれませんが、それにしたってもっと上手くやれるだろうと心底思いました。

 

そんな読者の心を代弁するツッコミ役が凪野くん。
煙に巻くような夜子の物言いと、彼女のペースに巻き込まれつつ律儀にツッコミを入れていく凪野くんの掛け合いが軽妙でとても楽しかったです。
夜子の下ネタとかほんと酷いのに笑ってしまうし。悔しい。でも天丼うまい。

 

凪野くんが夜子に振り回されていくうちに、彼女との関係を見つめ直していく復縁の物語としても良い読後感を得られて満足しました。
事なかれ主義だった凪野の変化に安堵。夜子を一人にするのは色んな意味で心配なので、彼にはこれからも夜子の面倒をみてもらわなければ。ご愁傷様です。

 

楽しく読める面白い作品でした。
死神との決着がついてないのでシリーズ化するのかな?

 

この1冊だと夜子の掘り下げが粗いので、続刊があればそのフォローを期待したいところ。
人助けに躍起になる夜子を描きつつも、その土台となるエピソードがないことが気になったんですよね。
「小学生のわたし」と「中学生のわたし」の具体的な失敗エピソードがあったほうが、夜子の抱く暗い無力感に説得力があったと思うんです。
小さい頃のエピソードだけみるとサイコパスっぽいんで(桐谷を連れての死体観賞とか)、どこらへんで無力を感じて人助けを諦めたのかをもう少し詳しく書いてほしかったかな。

 

あと、凪野に対して夜子がどう思っているのかも気になります。
ずっと絶交状態だった割には凪野の家(定食屋)に通っていたり、何が何でも凪野を死体見聞に巻き込もうとしたり、夜子にとって凪野が特別な存在なのは察することができるけれど、彼女の言葉でそこらへんにもうちょっと触れてほしい。
この点については続刊で語られそう気もしますけどね。
せっかく私好みな幼なじみカップルですし、大いに期待していようと思います。

 

何はともあれ続刊を楽しみに待ちたいところ。
というか、カクヨムで続きを連載してるんですよね。

風見夜子の死体見聞 続短編/著:半田畔(カクヨム)

本になるか分からないから(なると思うけど)、とりあえずこちらを読んでおきますかねー。

 

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