血と霧1 常闇の王子/多崎礼


血と霧1 常闇の王子 (ハヤカワ文庫JA)
血と霧1 常闇の王子 (ハヤカワ文庫JA)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2016年5月刊。
吸血鬼×スチームパンク×ハードボイルドなダークファンタジー。
捜し物が得意な探索者の主人公が、様々な捜索依頼を受けたことから大きな事件に関わっていくことになる物語です。
煙草と硝煙が似合う主人公の渋さがめちゃくちゃ格好いい。過去の因縁から生まれる彼の後悔と葛藤は切ないのですが、うっかり溢れる父性が可愛いかったりもして、情に厚いキャラクターがとても魅力的でした。
吸血鬼が支配する世界観は細部がユニークで面白く、血液を操る異能者たちの駆け引きやアクションも読み応え抜群。
物語はまだ始まったばかりでストーリー的に少し中途半端なところで終わっているのですが、2巻は7月に出るとのこと。とても楽しみです。

☆あらすじ☆
血の価値を決める三属性――明度(バリュー)、彩度(クロマ)、色相(ヒュー)――による階級制度に支配された巻き貝状の都市国家ライコス。その最下層にある唯一の酒場『霧笛(むてき)』で血液専門の探索業を営むロイスのもとに、少年ルークの捜索依頼が持ち込まれた。だが両親だと偽る男女は、事件の核心部分を語ろうとしない。価値ある血を持つと思われる少年に自らの過去の因縁を重ねたロイスは調査を始めるが、それは国家を揺るがす陰謀の序章に過ぎなかった。

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台となるのは、巨大な巻き貝(スネイル)の中に構成された都市国家ライコス。
そこは、明度、彩度、色相の三属性で価値が決められる「血」が何より重視され、人生の全てが血によって決められる世界。

頂点に立ち神聖視される王族、血の価値に従って階層化される人民、都市国家間を移動する漂泊民、血の三属性を持たない廃血。
血によって厳然と構造化された社会の中を窮屈そうに生きる人々の姿が印象的で、それは物語が進むにつれてさらに強いものとなっていきました。

 

そういう吸血鬼社会が舞台ではあるものの、いわゆる「吸血鬼もの」を読んでいる感じは(予想よりは)薄かったんですよね。
お金になったり動力になったり異能になったりと血液の役割が多く、「食物」であることが血液の役割の一つにすぎなかったからかな。
血液のカクテルを飲んだり、太陽光に弱かったりとステレオタイプな「吸血鬼」っぽさもあるにはあるんですけど。

 

さて、物語の主人公はライコス最下層の貧民街にある酒場「霧笛」で探索業を営むロイス
行方不明の王子・ルークの捜索依頼から始まり、いくつかの事件を通してロイスは彼自身の過去にも関わる大きな陰謀を暴いていくことになる、といった形でストーリーは進んでいきます。

 

ストーリーそのものの雰囲気はハードボイルドな探偵ものといったところでしょうか。
探偵役であるロイスがとても渋くて素敵でした。
血と硝煙と煙草と過去のトラウマ。それらを燻らせながら、淡々と裏社会で仕事をこなしていく一人の男。
格好いい・・・・・・! 大人の哀愁漂う背中にときめいてしまいました。

ただ、ロイスは渋いだけじゃなくて、とても人情味がある男。
酸いも甘いも噛み分けたかのような達観をみせたかと思えば、すぐ頭をぶち抜こうか考える死にたがりの顔をのぞかせて。
誰とも深く関わらないという拒絶をみせたかと思えば、子どもにダダ甘な父性を溢れさせたりもして。
そんなゆらゆらした自分の心に辟易してるところもまた人間くさく、魅力的でした。

 

ルークとの疑似親子みたいな関係も良かったなぁ。
きゃんきゃん吠える子犬のようにロイスに懐くルークと、一見冷たいけれどルークのことを誰よりも案じるロイス。
ルークのワガママ王子様っぷりに最初はイラッとしたものの、だんだん愛嬌が出てきて可愛く思えてきましたw 迂闊だけど良い子なんですよね。
そのルークが夢を語ったシーンはなんだか切なく。そういう未来が来ると良いよね・・・・・・ものすごく大変そうだけど(´・ω・`)

 

ルークやロイスを囲む周囲のキャラも個性的。
特にティルダ姐さんがすごく好きですw
「このティルダ姐さんはね、あんたの願いを無下にするような、器のちっちぇえ女じゃないんだよ!」のセリフに惚れる。

 

ヴィンセントも好きだったんですけどねー・・・。
「ヴィンス——お前は馬鹿だ」のセリフが哀しい。うわぁ。ここで愛称呼びなのか。
そして最後の一文が不穏すぎて泣きたい。

 

血の能力を駆使したり周囲の協力を得ながら様々な捜し物をしていくロイス。
捜し物だけでなくその裏に潜む陰謀まで暴いていくロイスは、最後にさらに大きな思惑に触れてしまうハメになってしまいましたが、ここからどう動くのか。
そしてなにより、彼自身の捜しものが見つかる日はくるのか。

 

個人的にはロイスの探し人が発見された上でルークの夢が実現する展開が一番ハッピーエンドな気がするのですが、それには国家規模の大事件が前提になっている気がしてハラハラします。その上、ロイスのあっさり命を捨てそうところも怖い。
ラストの彼女の決意も不穏だし、吸血鬼社会そのものもかなりゴタゴタしているようですから、まるで目が離せません。

 

とりあえず、7月発売の2巻をおとなしく待たねば。
次巻もとても楽しみです!

 

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