転生したけど、王子(婚約者)は諦めようと思う/鬼頭香月


転生したけど、王子(婚約者)は諦めようと思う (アイリスNEO)
転生したけど、王子(婚約者)は諦めようと思う (アイリスNEO)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2016年1月刊。
第1回アイリス恋愛F大賞「銀賞」受賞作。
「アイリスNEO」は一迅社文庫アイリスの四六判レーベルなのですが、私はこれが初読みでした。
本作は悪役令嬢転生モノのお約束を踏まえつつ、「運命だろうと他の人を好きになる男なんていらない」と言いながら大好きな婚約者を諦めきれずに嫉妬と恋心に揺れる貴族令嬢の物語。
失恋を覚悟するヒロインの悲壮感はとても切なくて良かったのですが、王子が化けの皮をぺろっと脱いでからの本領発揮が最高でした。いやー、笑ったw

☆あらすじ☆
貴方を奪われる運命は変わらない――。公爵家令嬢クリスティーナは、ある日、自分が恋愛ゲームの恋敵役に生まれ変わっていたことに気付く。婚約者のアルベルト王子に恋をしていた彼女は、いつのまにか彼に愛想をつかされていたのだと自覚し、愕然とする。そして、彼をヒロインに奪われる運命を静かに受け入れようと決心するけれど、物語は意外な方向に展開して――?嫉妬とプライドに揺れる、恋する令嬢と王子のラブロマンス。

以下、ネタバレありの感想です。

 

悪役令嬢ものといえば、「ある日突然、前世でプレイした恋愛ゲームの悪役令嬢であることに気づき、破滅の未来を回避・阻止・フラグ破壊をするために努力する」というのが私がよく見てきたパターンでした。

そういう意味で、本作の主人公であるクリスティーナは個人的に珍しいタイプの悪役令嬢ヒロイン。
まずメンタルが弱いんですよ、この子。
「婚約者がゲームヒロインを好きになって自分を捨てる」というゲームの運命をあっさり受け入れてるし。
絶望のあまり憔悴して積極的にフラグを折ろうとしない彼女に、おいおいもっと頑張れよ!と思わずにはいられませんでしたw

ただ、そのか弱さが少女の繊細な恋心をうまく引き出していて、儚く揺れるクリスティーナの絶望感に時折ぎゅっと胸を締め付けられるくらい切なくなるのです。

 

クリスティーナの絶望の深さは、それだけ婚約者であるアルベルトが好きだったということ。

幼い頃から大好きで仕方なかったのに、ゲームの記憶を思い出してから振り返ると、日に日に疎遠になっていく彼の心は確実に自分から離れていっている。だってあれもこれも愛を感じられない行動ばかり、ほらやっぱりシナリオ通りヒロインに優しくしてる・・・・・・と悶々鬱々としていくうちにクリスティーナは完全に自信喪失。

公爵令嬢としてのプライドから「自分に興味を失った男なんていらない!」と諦めようと覚悟するのに、「でも好きだー・・・」としょんぼりしたりもして。
そんなクリスティーナの姿は可哀想ではあるけど恋する女の子特有の可愛さもあったりして、そこがまた魅力的なのです。

公爵令嬢としての矜恃、ゲームヒロインへの嫉妬、アルベルトへの恋心。
様々な想いに振り回されるクリスティーナにどんな真相が待っているのか気になって、夢中でページをめくって物語にのめり込んでしまいました。

 

そんな感じで失恋の運命に怯えるクリスティーナの物語から始まるのですが、本作が本領発揮するのはアルベルトの化けの皮がはがれてから。
クリスティーナ視点の段階で少し予想はついていたものの、アルベルトの本音についてはある意味とてもお約束ですね。これは幸せな展開。

もっとも、アルベルトの本性は予想以上に残念で笑ってしまいましたけどw
こいつヤンデレ系じゃないですか!なぜ死ぬ前に誰かを巻き添えにしようと考えているのか。こわい。
口下手というか、言葉が足りてないというか。そのくせ行動がいちいち過激でびっくりするんですよねー。同乗した従者たちが可哀想だ。伝わってないメッセージという虚しさにさらに笑う。

 

結局この作品って、お互いを好きすぎて迷走する2人のすれ違いを楽しむラブコメだったのでしょう。序盤のシリアスどこへいった。

そして、初恋を描いた物語としても素敵。
王子のおいたが早すぎて戦慄しましたが、たしかにこんな関係が最初にあったならクリスティーナも心変わり(の運命)に絶望するほど傷つくよなぁって深く納得もしました。

色々な誤解が巻き起こした騒動でしたが、絡まった勘違いがほどける瞬間の「よかったぁ〜」っていう安心感がとても心地よかったです。
あと、かっこつけの仮面をはがされてからのアルベルトは普通に格好良かった。いちゃいちゃ甘々で糖度的にも大満足です。

 

そういえば、ゲームヒロインのクララは結局ごくふつうの令嬢ってことだったのでしょうか。一瞬、彼女も転生者なのかと疑ってしまったのですが。
あざとかったのは計算なのか天然なのか・・・・・・。
まぁ計算だったのかな。アルベルトもそんな感じで看破してたし。
もう少しクララを掘り下げてもいいような気はしましたが、実際に掘り下げても底が浅そうだし、これでも良いか。

 

あとフランツは王家に喧嘩売りすぎだと思ったんですけど、あれは大丈夫なんでしょうか。
金のある商売人って権力でどうこうできないから増長しちゃってたのかなぁ。どちらにせよクリス父は見る目なさすぎですね。

 

悪役令嬢転生ものの要素を取り入れつつ、初恋から始まるラブロマンスの王道を楽しめる作品でした。
次回作も期待していようと思います。

 

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