この恋と、その未来。5 二年目 秋冬/森橋ビンゴ


この恋と、その未来。 ―二年目 秋冬― (ファミ通文庫)
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前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2016年5月刊。
打ち切りと著者のラノベ引退というニュースがネットを騒がせていた本作。
前巻の内容もあって読む前からちょっと落ち込んでいたのですが、読んでみると意外に内容は明るい・・・・・・?
と、思ったのも途中まででした。ラストの急展開が色々と衝撃的すぎて。
ヘビーな青春恋愛ものですが、やはり読むと面白い。
ファミ通文庫版はここで打ち切りですが、何らかの形で完結巻を発表すると明言されているのが救いです。

☆あらすじ☆
――だから未来、お前はただ去るだけで良かったんだ――
山城との一件で三好を傷つけ、未来の信頼も失ってしまった四郎は、父の誘いで京都を訪れた。そこで三並と西園から、未来とともに結婚式に招待され困惑する。しかし未来から真実を知らされ、以前と変わらず接してくれる和田と梵、そして広美のおかげで徐々に日常を取り戻していく。そんなある日、梵に望まない婚約者のことを相談された四郎は、未来の妙案で仲間達と団結し、彼女を助けるため文化祭で一芝居打つことにするのだが――。

以下、ネタバレありの感想です。

 

あちこちにせっせと埋められた地雷が前巻で一気に爆発してしまったわけですが、打って変わって今回の雰囲気は比較的和やか。
京都旅行から始まり、ボンちゃんとのデート、文化祭、そして三並と東雲の結婚式。
四郎の心は未だささくれているけれど、周囲は何事もなかったように日常を取り戻し、文化祭では笑えないけど楽しそうな騒動を引き起こしたりもして。

ああ、何があっても、割とこんな風に日々は続いていくのかも。
日常が崩壊した!とか思ったところで、日常ってそう簡単に崩れないものなのかもなー、と女装しつつ楽しそうな(?)四郎をみて思ってしまいました。

まぁ、そんな和やかムードは途中まででしたけどね。やっぱり。

 

今回で、四郎の恋はまた一歩あらたな段階へと進むことに。
正直に言うと、個人的にはあまり広美さんを選んでほしくありませんでした。
高校生の青春恋愛ものとしては、同世代で衝突し、同世代と理解し合ってほしいという気持ちがあったので。

ただでさえ高校生が受け止めるには重すぎる四郎の恋。
その恋に戸惑い振り回されながらも、高校生達がどんな答えを見つけるのかを楽しみにしていたんですよね。

なので、それを癒やす相手に「大人」である広美さんが選ばれたことを個人的には残念に思えたのです。
まぁここまで煮詰まったらもう経験値的に彼女しかいなかったのかもしれないんですけど。本当に高校生には重すぎたってことですね。

もっとも、ここらへんの印象は完結巻を読むと変わってきそうな予感もあります。この巻では未来や三好との和解が中途半端だから尚更そう感じた気がしますし。

 

とは言え、広美さんが大人の女の経験値と行動力、ぶっちゃけ「ずるさ」を持ち込んできた段階で、四郎の若くて青くさい恋愛に昼ドラめいたどろっとしたものが混じったように感じたのには、複雑な気持ちになってしまいました。
前借りといい「ヤらんの?」発言といい、いちいち手管がエグい。あれを怖いと思ったのは私だけなのだろうか。別の意味で重いと思うのだけど。
書いてて気づいたのですが、私にとって広美さんは信頼できるヒロインではないのかもしれません。彼女の恋を素直に信じることができないというか、純粋な恋心以外に色々混ざってる感じがするというか。
そんな見通しにくい人物像は広美さんの魅力でもあるし、人として嫌いではないんですけどね。

 

大人のエグみに戦慄しつつも、広美さんとの関係は確かに四郎を癒やして成長させるものなのでしょう(成長の方向性が父親寄りになってるのは大丈夫か)。
だからこの展開を否定するつもりはありません。これもまた一つの答えですし、なんだかんだ言ってそれが間違っているとも思わないので。好みじゃないけどアリ。

 

それにしても、つくづく四郎の恋愛は大変そうですねぇ。
広美さんと四郎が関係を持つシーンを読んでるとき、「恋ってなんだろう?」というポエミーな疑問が頭をグルグルしました。
ふたりとも「好き」だという言葉は交わしてるし、ちゃんとそう思っているようではあるけれど、外的要因が多すぎてなんとも言えないこの気持ち。広美さんの「好き」も四郎の「好き」も、私はあまり信じることができないんですよね。先まで続く確かなものを感じないというか。ある意味、超絶リアルだなと思いました。
外因がなくなって物事が落ち着いたときが勝負の恋愛だろうなぁ、これ。

 

あまり広美さんをヒロインとして好意的に見れなかったのは、三好のフォローをもっとしてほしかったというのもあるのかも。
元サヤ展開くると期待してたのに。この巻でも扱いがひどくて泣ける。

 

ここまでつらつらと考えていて、ふと途中で四郎が観た「卒業」の話を思い出しました。
あれは結局、四郎の恋は(彼の思う)純愛にはならないという暗喩だったのかな。
高校生同士の恋を描ききり、そのふたりが結婚式まで挙げた前作「東雲侑子」シリーズがまさしく純愛の物語だとすると、本作の四郎の恋は「純愛」というにはあまりにも紆余曲折がありすぎるのかもしれません。
未来を想いながら三好と付き合った段階でその予兆はあったわけですが、今回の話を読んでますます「純愛」から離れていった気がしました。

 

ただ、理想的な純愛ではないとしても、四郎の恋が酷いものだと言いたいわけではありません。
むしろ、グチャグチャに入り乱れた彼の恋模様は、下手な純愛の物語よりも心を惹きつけるものがありました。
足掻いて、迷って、傷ついて、傷つけて。こんなに苦しくて堪らない気持ちにさせる恋なのに、そこに青春と人間くささを感じてなんだか笑いたくなってきて。かと思えば泣きたくもなって。不器用さにヤキモキさせられるけれど、間違えたり怯えたりしながら一歩ずつ踏み出す彼を応援したくもなる。私にとって、これはそんな物語でした。

四郎の気持ちは揺れ動きすぎて今は確かなものだと信じることができないし、きっと彼はまた何度も間違えるのでしょう。
でも、それらは全て彼の人生を濃く彩る経験となっていくはず。
そう思うと、四郎の恋の変遷のひとつひとつを大事に見守りたい気持ちになるんですよね。こういう感覚はあまり味わったことがないなぁ。

 

広美さんについての感想がちょっとネガティブになってしまった気がしますが、そこも含めて本当に素晴らしい作品だと思います。
好みの展開ではなかったにもかかわらず、その描写には魅入られるものがありましたし。
どのシーンをとっても苦しいほど心をつかんできて、それがまた強烈な読書体験となるのです。
読んでいてこんなに感情をかき乱される作品はほんとに貴重です。

 

ラストは突然の別離で締められ衝撃を受けましたが、個人的には今回のラストシーンも印象的だし、作品そのものの結末としてアリなんじゃないかとも思ったり。いやだめか。中途半端ですね。
完結巻で「再会」があるのであればぜひ読みたい。あと三好さんのフォローとかフォローとか・・・・・・フォローとか・・・・・・。

この言葉を信じてます。楽しみに待っていよう。

 

余談ですが、四郎が「男に迫られる未来の気持ち」を理解したシーンは酷すぎて普通に笑いました。そこか。そのシチュエーションで理解するのか。

 

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「この恋と、その未来。5 二年目 秋冬/森橋ビンゴ」への4件のフィードバック

  1. 僕もまとめてこれを買いました。
    もりはしさんはTwitterでフォローしてましたが……泣きそうでした。大好きなラノベでしたから○ァミ通文庫は闇が深そうです

    気長に完結を待ちます。

    1. ちゃーこりんさん、コメントありがとうございます。

      おおっ、まとめ買いですか!良いですね!!

      この打ち切りのせいで、Twitter上で闇堕ちした方を何人も見てしまいました・・・・・・。打ち切りはいつだって悲しいし、読者的には心が荒みますよね。

      それでも完結してくれると明言してくれるだけ、本当にありがたいです。小説家になろうか、カクヨムあたりでの連載を期待したいところですねぇ。

      1. Amazonのレビューでこの出版社に未来はないみたいなことが書かれてわらいました(笑)

        1. Amazonレビュー見ました。
          これはすごいですね・・・・・・まさに阿鼻叫喚・・・・・・。
          嘆きたくなる気持ちは分かりますけど、作品の評価まで落とされてしまってるのはとても残念です(´・ω・`)

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