思い出のとき修理します4 永久時計を胸に/谷瑞恵


思い出のとき修理します 4 永久時計を胸に (集英社文庫)
思い出のとき修理します 4 永久時計を胸に (集英社文庫)

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
大好きな谷瑞恵さんの一般文芸初進出となるシリーズでしたが、ついに完結。
懐かしい思い出と、その時を刻む時計の優しい物語。最後までとても素敵でした。穏やかな気持ちになれる良い作品だったと思います。
そして秀司と明里のカップル、本当に大好きです。

☆あらすじ☆
不仲に思えた両親の絆、亡き妻への秘めた思い…時計店には今日も人々の「思い出」が持ち込まれる。そんな中、秀司が作ってくれているドレスウォッチの完成が近いと聞き、喜びとともに複雑な気持ちになる明里。秀司の元に、スイスの時計工房から手紙が届いているらしいからだ。ともに商店街で暮らす未来を夢見つつ、本当は秀司がスイスで修業を続けたいのではないかと悩み…。ついに完結!

以下、ネタバレありの感想です。

 

昼と夜のエタニティ

夫婦の在り方って、色々あると思うんですよね。
結婚という形は素敵だけど、そこに囚われる必要はないというか。和歌ちゃんの両親の話は結婚の先にある幸福を描いていて、これもまたひとつの理想のように思えました。
まぁそうは言っても「結婚」というのは一つのゴールではあるし、その証にロマンを求めるのも当然のこと。そして、そこに思い出が生まれていくのもまた必然。
昼と夜のそれぞれの時間を補い合えるペアウォッチとか、あまりにもロマンチックすぎてときめきが止まりませんでした。これはマネしたくなる人が結構いるのでは。

 

幸運のタイムカプセル

うわぁだめだー。私、老夫婦の絆というか年月によって積み重ねられた愛情というか、そういう感じの話に弱いんです。
恋の煌めきや情熱的な激しさがあるわけではなくても、一緒に過ごした長い長い時間の中で生まれる想いって、本当に尊いものだと思うのです。

たとえ自分が先にこの世を去っても、思いは未来へ届けられるから。(159頁)

この一文に涙腺決壊。

 

パートナーのしるし

これを読んでしまったらこのシリーズとお別れなのか・・・と泣きそうになって、しばらく読むのを躊躇ってしまった最後のエピソード。
明里と秀司が次の段階に進むための物語でした。

秀司の独立時計師の夢はどうなるのか気になっていたんですよね。彼が本当に旅立ってしまうのかどうか読む前からハラハラ。
だって、離れても大丈夫!って明るく簡単に断言できる二人ではないですからねぇ。現実をしっかりと見据えている二人だからこそ、自分たちの将来について真剣に悩む姿を固唾を呑んで見守ってしまいました。

たくさん悩んで、迷って、そうして二人が出した答えはとても誠実で良かった。
本当に良いカップルですよね。
お互いがお互いに優しくて、でもそれは自分の気持ちを我慢して譲り合うことじゃないんだよなぁ、としみじみ。

夢を叶えることと、二人で歩んでいくことを両立させるのは大変に違いないけれど、思い出の詰まった商店街がきっと二人をこれからも結びつけていくのでしょう。そういう不思議な力のある商店街ですから、ここは。

不思議といえば、太一の正体については結局どういうことなの?と笑ってしまいました。
現実なのか幻想なのか曖昧な太一の存在は、現実と幻想が混じり合う商店街の象徴のように感じていたので、個人的にはハッキリさせる必要はないと思っています。だから完結巻でもふんわりと締めたのはとても好みな終わり方でした。
それはそうとして、私は狛犬が本当に大学生をやってる説を押します。

 

 

優しくて穏やかな時間に浸れる良いシリーズだったと思います。
これで終わりは寂しいけれど、この作品を生み出してくれた谷さんへの信仰心は高まるばかり。
次回作はいつになるかなぁ。異人館画廊の新刊も待ってます!

 

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