鳥は星形の庭におりる/西東行


鳥は星形の庭におりる (講談社X文庫ホワイトハート)[Kindle版]
鳥は星形の庭におりる (講談社X文庫ホワイトハート)[Kindle版]【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2009年3月刊。
神々が去ったあとの世界に残された鳥の塔と迷宮の謎を巡る、聡明な少女と名もなき吟遊詩人の冒険譚。
奥行きのある世界観がとても素敵。主人公の気高さも読んでいて気持ちの良いものでした。
そしてラストの切なさと透明感には胸を打たれます。幸せな余韻に浸れる素晴らしいファンタジーでした。

☆あらすじ☆
双都オパリオンの貴族の娘プルーデンスは、ちょっぴりおませな13歳。亡くなった祖母を弔うため、家族とともにアラニビカ島に向かうが、遺品から護符が見つかって――。島の迷宮の謎をめぐり、プルーデンスは大人たちの陰謀に巻き込まれていくことに。味方となるのは、蒼い衣をまとった名無しの吟遊詩人。容易く女たちを魅了する彼の正体は――。壮大な迷宮ファンタジー、堂々のデビュー!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

家族からの愛に恵まれない貴族令嬢プルーデンスと、彼女の前に現れた蒼い衣の吟遊詩人
祖母が遺した護符の争奪戦に巻き込まれていくプルーデンスは、詩人の力を借りながら星の塔と迷宮の謎を解き明かしていくことになるのです。

 

主人公のプルーデンスは13歳の少女らしい潔癖さと、少女らしからぬ聡明さを兼ね備えたヒロイン。
母の愛を求めながらも、それが弱さを求めるなら不要だと割り切ってしまうシーンはとても印象的でした。
寂しさを感じても嘆くことはすまいと決意する姿が気高い。
プルーデンスが割とキツい物言いをするのは、小さな彼女が一人で立つために必要な鎧なのかもしれませんね。そんな強さを尊敬するけれど、鎧を纏わなければいけないことに痛々しさも感じたりして。

 

一人ぼっちのプルーデンスを支え、謎解きのパートナーとなるのが蒼い衣の吟遊詩人。
詩人のミステリアスで朗らかな雰囲気はとても魅力的でした。
神秘を探る冒険を描く物語の中で、彼自身も神秘的なんですよね。
何を目的としているのかハッキリ見えてこない怪しい人物のはずなのに、プルーデンスを理解してくれる優しい存在でもある詩人。信じていいのかダメなのか、最後までちょっとドキドキさせられましたw

 

二人が挑む謎を形作る世界観も素敵。
特に「数」と「名」に関する神話の美しさにうっとりしてしまいました。
こういう丁寧に奥行きまで作り込まれたファンタジーは大好物です。

世界観に奥行きがあるため序盤は少し読むのに時間がかかったものの、徐々にエンジンがかかっていき、終盤の迷宮への突入シーン以降は息するのも忘れるほど物語に没頭してしまいました。
最上階に行き着いたシーンの美しさといったら。
ああ、ファンタジーを読んでいる! という充足感が素晴らしかったです。

 

そしてラストもとても良かった。
切ないくらいにあっさりと、そして颯爽とした別れ。
寂しく感じつつも、この物語には相応しい幕切れなのだと思います。

これからのプルーデンスの人生においても、思い出の中の吟遊詩人が彼女の心を優しく癒やしてくれるのではないでしょうか。
せめて、いつか詩人のようにプルーデンスを理解してくれる者が現れる日までは。

 

少し寂しく、けれど爽やかな風を感じる素敵な余韻。
こういう読後感はとても好きです。読めて良かった。

 

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