この大陸で、フィジカは悪い薬師だった/鳩見すた


この大陸で、フィジカは悪い薬師だった (電撃文庫)
この大陸で、フィジカは悪い薬師だった (電撃文庫)

評価:★★★☆☆
2016年4月刊。
「ひとつ海のパラスアテナ」の鳩見すたさんの新作。
エイル教の敬虔な信者である新米巡礼戦士の少年と、教えに逆らって害獣を治療する薬師の少女のボーイ・ミーツ・ガールなファンタジー。
立場や思想を対立させつつも共に行動することになった2人が、各地で様々なモンスターに出会っていく連作短編で、各エピソードはそれぞれが面白く、広い世界を感じさせてワクワクとさせてくれるものでした。
真実と善悪は自分の目で見て判断しなさい、という感じのお話って好きなんですよねぇ。

☆あらすじ☆
僕は絶対許さない。エイル教の教典『ラズの書』に記された禁忌を冒し『害獣』を治療して回る異端者フィジカを―。彼女はその可愛い見た目(あくまで見た目だけ!)とは裏腹に、人間の治療を拒否するんだ。薬師なのに!だから僕は、フィジカを必ず捕まえて、改心させてみせる。エイルの教えは絶対なんだから。…でも、最近フィジカの行いが正しいような気もして…いや、絶対認めない!コカトリス、サラマンダー、一角獣、人魚…異世界にまつわるモンスターの神秘と医療を描く、新感覚ファンタジー、登場。

以下、ネタバレありの感想です。

 

なりたての巡礼戦士アッシュは、モンスター討伐で負傷したところを「悪い薬師」フィジカに救われ、色々と理由をつけつつ彼女と共に各地を旅することに・・・・・・という感じで物語はスタートします。

 

コカトリス、サラマンダー、一角獣などの多様なモンスターが登場する連作短編形式となっていて、人々とモンスターとの関わりを通して、知らなかった現実や教えから見えてこなかった真実が見えてきたりと、旅を通してアッシュが少しずつ成長していく様子が描かれていくのが印象的でした。

 

どの話も面白かったのですが、一番印象的だったのは第四話「人魚の卵を割った日」
悲劇的な異種婚姻譚としても良かったのですが、オチがなかなかゾクッとさせる感じで好み。
モンスターを否定する教えがある世界で、こういう街の存在をどうみるべきなのか、アッシュにとっても複雑な気持ちになるエピソードですよね。
まぁその割には途中とてもイイ顔で笑っていたので、彼もだいぶフィジカに感化されてきてるなぁとニヤニヤしたりもしたのですがw

 

ストーリーだけでなく、キャラクターも良かったです。

主人公アッシュは、敬虔な信者ではあるものの重度に盲信しているわけではなく排他的になったりしているわけでもないので、頭でっかちなキャラの割に嫌悪感がなく、むしろ好感が持てる少年でした。
ちょっと頼りになるのかならないのかわからないところはあるけれど、ドラゴンの話で女装をして突入したように思い切りの良さが爽快でもありました。

 

ヒロインのフィジカは薬師というより獣医みたいな雰囲気もありましたが、それがまた新鮮な感じ。
基本的にツンツンしてるけど、賭け事に弱いところとか愛嬌があって素敵な女の子でした。
「フィジカ」の在り方もモンスターが可哀想だとかいう単純なものではなくて、もっと世界の真理に近い部分にあって興味深かったです。

 

アッシュとフィジカが旅してまわる世界はとても広く感じられて旅モノの醍醐味を感じられたし、これはぜひシリーズ化してほしい新作です。

というわけで続刊に期待しています!

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