大正箱娘 見習い記者と謎解き姫


『大正箱娘 見習い記者と謎解き姫』(紅玉いづき著/講談社タイガ)★★★☆☆

大正箱娘 見習い記者と謎解き姫 (講談社タイガ)
大正箱娘 見習い記者と謎解き姫 (講談社タイガ)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2016年3月刊。
大正時代という開かれつつある時代の「女性」を描く4本立ての幻想的なミステリー。
なんとも奇妙な空気をもった作品でした。
箱娘によって開かれる「箱」の中にある真実は、仄暗くて窮屈で、正直、あまり読後感は良くないものばかりでした。
私はちょっと疲弊しましたが、この異様な雰囲気はクセになりそうだし、話そのものは面白かったです。

☆あらすじ☆
新米新聞記者の英田紺のもとに届いた一通の手紙。それは旧家の蔵で見つかった呪いの箱を始末してほしい、という依頼だった。呪いの解明のため紺が訪れた、神楽坂にある箱屋敷と呼ばれる館で、うららという名の美しくも不思議な少女は、そっと囁いた――。「うちに開けぬ箱もありませんし、閉じれぬ箱も、ありませぬ」謎と秘密と、語れぬ大切な思いが詰まった箱は、今、開かれる。

以下、ネタバレありの感想です。

 

新米新聞記者英田紺が上司に言われて訪れたのは「箱娘」と呼ばれる回向院うららの住む屋敷。
物語は、二人の出会いから始まり、箱娘が「箱」を開いて謎を解くことになる4つの事件を描いていきます。

 

個人的に、大正時代って好きな舞台なんですよね。
文明が開かれて、未知の可能性が広がりをみせる時代。
古きと新しきが混ざり合う時代ならではの独特な雰囲気が魅力的で、そこで生きる女性達も(旧来の価値観を捨てきらずとも)新しい女性像に夢をみて輝いているイメージがあったりして。

 

しかし本作で切り出されスポットを当てられるのは、あの時代の影にあった憂鬱な部分。

 

新しい女性像が受け入れられるまでの過渡期において、新しい女性としての生き方を模索する女性もいれば、そういう風に生きることはできない女性もいて。
思えば、家という「箱」に閉じ込められてきた女性たちが、誰でも簡単に箱から外へ飛び出せるわけがないんですよね。

過去の一件で家の中の女であることに絶望しつつも、「新しい女性」になりきることもできず「男性」の姿を借りるしかなかった紺。
そんな彼女の目からみる息苦しい社会は、読んでいて本当に鬱々とするものでした。

 

表紙の華やかさに反し、この作品で大正の「新しき」を楽しむことはできませんでした。そういうのを求めちゃいけない作品だったか。

むしろ、新しい時代という光があるから、古い因習の影をより濃く感じるというか。
それもまた大正時代ならではというものかもしれませんが、個人的にはコントラスト比がちょっときつかったかな。
開かれつつある日本の中に取り残された古い部分をこれでもかと見せつけられて、ちょっと疲れてしまいました。

 

そして、探偵役である箱娘が開いていく箱の中にある真実も、どれも時代を思わせる仄暗いものばかり。
開けば救われるわけではないのだから、読後もズッシリとした重い感情を持て余し気味に。女のしっとりじっとりした部分って怖いよなぁ・・・・・・とゾッとしました。

 

ううむ。
文章は相変わらず素敵だったし、うららの神秘的な雰囲気とか紺の事情とか、この読み味は嫌いではないはずなんですけど。
ちょっと感想がヘコみ気味なものになったのは読むタイミングが悪かったからなのかも。

 

とりあえず、うららの謎が気になるので次巻は読もうと思います。

 

あとがきで、講談社を「箱に娘が入っている代名詞」とされているのは、やっぱりあの鈍器の話だろうか。そう言われると雰囲気が似ているかもしれない。

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