トオチカ


『トオチカ』(崎谷はるひ著/角川文庫)★★★★☆

トオチカ (角川文庫)
トオチカ (角川文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2016年1月刊。初出は角川書店2013年4月刊。
過去の恋によって傷ついた心を少しずつ癒やしていく大人の恋の物語。
この作品の主人公みたいな、内省的で自罰的な方向に面倒くさい女性主人公って好きなんですよね。ぐずぐずと悩んでいても、足掻いたり藻掻いたりしながらゆっくり前へと進んでいく姿をみるのが好き。
そんな主人公の繊細な心理描写がとても素敵な作品でした。
読んでいて共感する部分と発破をかけたく部分とがあって、もどかしい里葎子の言動をハラハラしながら見守るのが楽しかったです(´∀`*)
良い恋愛小説を読めて大満足!

☆あらすじ☆
親友と2人で鎌倉に小さなアクセサリー店「トオチカ」を営む里葎子。都内で働いていたころ恋で手酷いトラウマをおったが時間をかけて人生を立て直したことにひそかな誇らしさを感じていた。そんな彼女の心を久々に動かしたのは店に立ち寄るバイヤーの千正だった。けれど彼のおおらかな男らしさに無意識に身が竦んでしまう。戸惑いながらも自分の気持ちにむきあった里葎子は…。不器用な大人に訪れた、恋という奇跡の物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

過去の恋で傷つき、逃げた先の鎌倉で親友と共に雑貨ショップ「トオチカ」を営み始めた里葎子
店にやってくるバイヤーの千正はやたらと里葎子に構うけれど、彼の姿や態度は彼女の傷を刺激するもので・・・・・・、というストーリー。

千正への反感や苦手意識が彼を知ることで少しずつ変わっていき、そこから恋が生まれていくまでの過程を丁寧に描く素敵な物語でした。

 

遠くに逃げ込むほど追い詰められて、殻に閉じこもるほど傷つけられた心を抱える里葎子。
彼女の前には過去のトラウマが壁として立ちはだかっていて、癒えきっていない生傷は事あるごとにチクチクと里葎子を刺激するのです。
できるだけ傷に触れたくない里葎子が、傷を刺激する千正を拒否するのも仕方がないことなのかもしれません。
あっさり傷に触れるくらい強い女性なら、そもそも避難なんてしないでしょうし。

 

そんな弱い里葎子が、千正の人となりを知り彼に惹かれていくなかで、怖々と傷に触れながら過去と自分に向き合っていくわけです。
少しの衝撃でぷつんと千切れてしまいそうなほど張り詰めているのに、そんなことをして大丈夫かとハラハラしました(;`・ω・)
けれど、彼女の中でどんどん大きくなる千正の存在が逃げることを許さないんですよね。
じっくりと丁寧に描かれる里葎子の変化がすごく素敵で、震えながら一歩を踏み出そうとする彼女を応援せずにはいられませんでした。

 

とはいえ、変化を恐れて殻に籠もる里葎子の不器用さはもどかしくもあって。
しかもこの殻は自分も他人も傷つけるトゲだらけ。
「なんでそこでそんなこと言っちゃうの!」って何度思ったことか。言葉のチョイスが壊滅的に下手すぎる。
その度に千正の器の大きさに戦慄させられました。マゾっ気がないとやってられないくらいキツいトゲだったので。

 

それにしても、千正さん格好良かったなぁ。
殻に閉じこもる里葎子をツンツンと容赦なくつつくけれど、彼女が自分から出てくるまでじっと待っているようなイメージ。
どこまで踏み込むか見定めつつ、踏み込むタイミングを間違えない。
そんな大人なところを見せつつ、ユーモアもあって、稚気もあって。そして「粘り勝ち」に「一目惚れ」ときたか・・・・・・。
ある意味、夢が詰まった男性像は少女小説のヒーローのようでした。つまり私はめちゃくちゃ萌えたw

 

里葎子の過去の傷については、かなりリアリティがあってゾッとするものでした。
モラハラ怖いですよね・・・・・・独りよがりな女性観を押しつけてくる男性は怖い。
それに、目の前でモノに当たられるのもDVと同じくらい傷つけられるってことはもっと知られるべき。
彼に関するオチは釈然としないものがありましたが、まぁ時間はいろいろ変えていくということか。

 

とても素敵な恋愛小説でした。
甘さに萌え転がってため息。後日談な短編の劇甘っぷりで更にローリング。こういう作品大好きです。

崎谷はるかさんの作品は初読みだったのですが、この方の心理描写ほんとに素敵ですね。好みすぎて悶える。
他の著作を読んでみたいのですが、・・・・・・・・・BLかぁ。ベッドシーンがなかなか濃厚だったのはBL小説由来なのか(偏見かな)
ううむ。BL分野は苦手意識があったのですが、この機にちょっと試してみようかしらん(;`・ω・)

トオチカ (角川文庫)
崎谷 はるひ
KADOKAWA/角川書店
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「トオチカ」への2件のフィードバック

    1. 茶一こりんさん、コメントありがとうございます。

      単巻ものですよー。
      一冊で綺麗に終わっています(`・ω・´)ノ

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