王女コクランと願いの悪魔1


『王女コクランと願いの悪魔』(入江君人著/富士見L文庫)★★★★★

王女コクランと願いの悪魔 (富士見L文庫)
王女コクランと願いの悪魔 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2014年9月刊。
著者は「神さまのいない日曜日」(富士見ファンタジア文庫)の入江君人さん。
著作は読んだことがなくて、表紙がカズアキさんだったので買ったのですが・・・・・・予想を遙かに上回る、素晴らしい作品でした。
孤高の王女と願いを叶える悪魔の出会い。それによってひとりぼっちの王女の世界に変化が訪れます。
そして、読者はその変化が何を意味するのかを知らなければなりません。
コミカルで軽快なコクランと悪魔の会話に笑いながらも、だんだんと胸が苦しくなっていき、最後にはただハラハラと泣きながらページをめくっていました。
残酷で、儚くて、美しい恋の物語です。素敵なおとぎ話です。ぜひ読んでほしい!とおすすめしたくなる一冊でした。

☆あらすじ☆
「さあ、願いを言うがいい」「なら言うわ。とっとと帰って」
王女コクランのもとに現れた、なんでもひとつだけ願いを叶えてくれるという伝説のランプの悪魔。しかしコクランは、願うことなど何もないと、にべもなく悪魔を追い払おうとする。なんとか願いを聞き出そうと付きまとう悪魔。しかし、“すべてを与えられた者”と謳われるコクランを取り巻く王族と後宮の現実を知ることになり…。
物語を一人演じ続ける王女と、悠久の時を彷徨う悪魔の、真実の願いを求める恋物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

孤高の王女コクランが出会ったのは、願いを叶えるという美しい悪魔。
願うことなどないとコクランが言うため、レクスと名付けられた悪魔は彼女が「真の願い」を口にするまで傍にいることを決めます。そうして、コクランとレクスの物語は幕を開けます。

 

才女のひしめく後宮(といっても女学校に近い雰囲気)の中で、誰の干渉も受け入れず、誰にも干渉はしないというコクランが作り上げた孤独な世界。しかし、のんきで悪戯好きなレクスによって良くも悪くも彼女の世界には変化が訪れます。
物語は連作短編の形をとりながら、少しずつ距離が近くなるコクランとレクスの関係や、ぎこちなくも周囲の人と関わっていくコクランの姿をゆっくりと描いていきます。

 

理知的で冷徹なコクランが、レクスに振り回されながら、徐々に仮面がはがれていく描写がとても良かったです。レクスも、陽気でコミカルなのに、ふとした瞬間に毒気の強い危険な魅力を醸し出すのがとても素敵なキャラクターでした。
レクスの存在によって、緩やかに穏やかに崩れていくコクランの世界。

 

しかし、レクスがコクランに聞いてはいけない質問をし、コクランがレクスの触れてはいけない秘密を暴いてしまったところから、物語は次第に暗く切ない雰囲気へ。
そして、読者はコクランの世界が本当に崩しても良いものだったのかどうかを知っていくことになるのです。

 

孤高だったコクラン。どうして彼女はひとりでいたのか。なぜ他者を拒絶してきたのか。
その真相がとても残酷で、同時にこれまで描かれてきたコクランの数々の不可解な言動が腑に落ちて、彼女の置かれてきた境遇に切なくて仕方なくなりました。

 

さらには、「願いの悪魔」が本当はどういう存在なのかも明らかになり、どうしようもない絶望感を感じさせながら物語はクライマックスへと突き進んでいきます。

 

終盤はずっと泣いていました。
思えば、最初はコクランもレクスも人間味に欠けたキャラクターだったんですよね。レクスは陽気だけど悪魔的だったし。それが、色々な人に関わったり事件に遭遇したりすることで、次第にふたりとも感情の出し方が自然になっていって、活き活きと輝くキャラクターに変わっていくんです。
コクランはよく笑うようになっていったし、レクスはそんなコクランを自然に気遣うようになっていって。
劇的に想いが生まれるのではなく、自然に積み重なった関係の先に恋心が育まれていったのだろうなと感じていました。

 

だからこそ、「愛が欲しい」というコクランの願いに目が潤み、死にゆくコクランのためにレクスが禁忌を承知で必死に言葉にしようとする姿に涙して、それが叶わない瞬間に号泣してしまっていました。

 

悲劇で終わるはずだったひとりぼっちの王女さまの物語。
しかしそれを変えたのは、「願いを叶える悪魔」が初めて抱いた願いでした。

 

コクランの死ですら涙が止まらんとか思っていたのに、その後の展開は私の涙腺を絞りきる気満々でした。

 

ひとりぼっちの王女さまは欲しかった愛を手にし、愛を言えない悪魔は消えて、愛を伝える青年が残って。
コクランとレクスの物語は今度こそ本当に始まるのでしょう。あの夜会でレクスが言ったように、これまでの物語はちょっとしたプロローグで、これから百巻も二百巻も続く大冒険の世界にふたりで飛び出していくに違いありません。

 

最高に美しくて愛にあふれるおとぎ話でした。文句なしの名作だと思います。

 

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