マージナル・オペレーション5


『マージナル・オペレーション05』(芝村裕吏著/星海社FICTIONS)★★★★★

マージナル・オペレーション 05 (星海社FICTIONS)
マージナル・オペレーション 05 (星海社FICTIONS)

最終巻にふさわしい盛り上がりと面白さでした!
攻め込まれ、追い込まれ、マージナル(ギリギリ)なオペレーションを繰り返すアラタ。
冒頭からして鳥肌が立ちました。
そして子供たちの成長もみられ、アラタとジブリールの関係も・・・・・・。
現代(といっても少し未来か?)の戦争を描くシリーズでしたが、その本質はファンタジー。ファンタジーな世界の中で、どこか他人事のように自分を見ていたアラタが生きて悩んで苦しむ姿に目が離せなくなり、彼が常に抱き続ける疑問に一緒に頭を悩ませる物語でした。

☆あらすじ☆
アラタたちの活躍により、人民解放軍は打撃を受けた。しかし、大国としての誇りを背に、中国はミャンマー侵攻作戦を継続する…。時を同じくして、スポンサーである西側諸国から切り離されるアラタたち。さらに、ミャンマー軍すらも中国側に寝返ってしまう。そして、その四面楚歌の状況の中、国境をこえて怒涛のごとく押し寄せる人民解放軍。敵は一四万人、味方は三〇〇〇人。この劣勢な局面で、新田良太の作戦指揮が暁を呼ぶ―。
芝村裕吏が贈る英雄譚、ついにクライマックス!

以下、ネタバレありの感想です。

 

中国軍に攻め込まれ、ミャンマー軍に裏切られ、スポンサーには降りられ・・・・・・という孤立無援四面楚歌の状態からの逆転劇が最高に爽快感があって面白かったです。これぞ最終巻!

 

「マージナル・オペレーション」というシリーズは主人公アラタ視点で、なおかつアラタの考え全てが文字として書き表されるわけではないため、その都度の戦況は行間を読んで把握しなければならないことが多かった気がします。これが戦争の知識皆無の私には少し難解だったのですが、そのことへのストレスを押し込めるほど面白かったから最終巻までさくさくと読み進んできました。

 

その最終巻はといえば、前巻以前よりは戦況把握がわかりやすくなったような。1巻に比べてアラタの人間性が豊かになったことと関係があるのかもしれませんね。 最初の頃は画面越しに淡々と進むだけだった戦争も、徐々にその画面の先で戦っている兵士たちの存在感が浮かび上がり、この最終巻ではまさにそこで銃を握りしめて走っている子供たちの息づかいが聞こえてくるほど生々しいものとなっていました。
子供たちのキャラクターがしっかり描かれ、ひとりの人間として存在するようになったのも理由のひとつかもしれません。特にイブン。「イヌワシのヒナ」として目覚ましく成長をみせました。空気を読めるという意味ではアラタより優秀w

 

このシリーズは、アラタ自身も読んでいる私も「子供に戦争させるなんて」という倫理的な批判を常に抱きながら、「でも、もしジブリールたちのような子供がいて、この子供たちを人間として育てていくためにはどうしたらいいのか」を考え続ける物語なのだと思います。
「マージナル・オペレーション」の世界はあくまでファンタジーだけど、ジブリールはファンタジーじゃないんですよね。倫理的な批判をなくしてはならないけど、正しい答えはわからないです。難しい。結局、アラタ自身も答えを出せず、子供を使った戦争を続けることでしか子供たちを育てる方法がわからないまま物語は終わってしまいました。批判は簡単だけど、なら代替案は?というのは作中頻繁に出てくる皮肉ですが・・・。

 

そういう意味で、一番皮肉に感じたのは自衛官の斉藤さんの存在でした。子供たちが戦っているのを実際に目にしながらも、彼女はあっという間にアラタに媚びて色気づく。最初は「子供使い」を批判的に見ていたくせに、肝心のところで国に泣きついて引き上げる。結局、彼女には何も見えていなかったのかもしれないですね。批判するだけして、よそ見して、何も学ばずに帰って行く。醜悪すぎる「日本人像」がそこにあったような気がします。穿ち過ぎかな。とりあえず、作中で斉藤さんがキシモト並に嫌いなキャラクターでした。同族嫌悪かもしれませんが。

 

そういえば、似たような存在になるとか思っていたホリーは意外に最後は戦っていました。彼女は彼女の戦争を続けるようです。ホリーのやり方が一番理想的なんでしょうけど、そこまで持って行くのがきっと難しいんだろうなぁ。
ホリーといえば、ジブリールとの三角関係が面白いことになっていました。川の字で寝始めたシーンは笑った。親子か!

 

そしてジブリールとアラタ。
もしここでアラタがジブリールに恋をしていたら、駄作に終わったと感じたかもしれません。大人になったら別に結婚だろうとなんだろうとしても構わないですけど、ジブリールが子供の間はあくまで「父と娘」という関係でいてほしかったので。アラタは「父」というキャラクターが魅力的な主人公でしたからね。
ジブリールに女性的魅力をうっすらと感じつつも、彼女の成長を見守るという態度を貫いてくれてほんとに良かった。成人するまでは待とう!

 

このシリーズ、本編は完結しましたが短編集があるようです。そちらを読むのも楽しみです。

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芝村 裕吏,しずま よしのり講談社
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