迷子と迷子のアクセサリー店 家なき少年と彷徨う国


『迷子と迷子のアクセサリー店 家なき少年と彷徨う国』(高里椎奈著/ビーズログ文庫)★★★★☆

迷子と迷子のアクセサリー店 家なき少年と彷徨う国 (ビーズログ文庫)
迷子と迷子のアクセサリー店 家なき少年と彷徨う国 (ビーズログ文庫)

思っていた以上に不思議系というか哲学的なお話でした。ビーズログっぽくない、どちらかというとMW文庫とかそっち向けな作品だったように思います(著者は講談社文庫とか角川文庫でよく書いている人だったんですね。)
記憶を失った少年が、不思議な店主が営むアクセサリー店でアルバイトをすることになり、店に訪れる様々な客の事情に触れていく、というお話。連作短編になるのかな。人の価値観や主観がどれだけ曖昧であやふやなものなのか身につまされるエピソードもあったりして、読んだ後にこちらの心が迷子になるような気分になる不思議な感覚を味わいました。
面白い作品でした。価値観が揺らいでしまうような奇妙な気持ちを味わいたい方におすすめです。

☆あらすじ☆
僕は、何人目の“迷子”なんだ?高里椎奈×THORES柴本が織りなす「奇妙な空想譚」開幕!
少年が開いた扉は、何故だかアクセサリー店へと繋がっていた。
来た道を思い出せない少年の前に現れたのは、無神経で無愛想、おまけに生活能力ゼロの店主。
その傍らには、喋る狼が!? 訪れる客も、風変りな者ばかり。店主に店の所在地を訊ねても、飄飄とした的外れな答えしか得られない。
「迷子、おまえがどこから来たのか当ててやろう」……すべてが不合理な中、奇妙なゲームが始まった!

以下、ネタバレありの感想です。

 

第一話 不思議の国
自分の名前もどこから来たのかも覚えておらず、気づけば不思議なアクセサリー店の中にいた主人公。店の主人シオンメイと名付けられた彼は、シオンの店に訪れる客が持ち込む彼らのエピソードに触れつつ、「価値観」「主観」について考えていくことになります。

 

第二話 小人の国
巨人が自分の娘に贈るアクセサリーを依頼する話なのに、なんでタイトルは「小人」の国なんだろう?と思っていたら読み終わって納得しました。
この作品でいう「国」というのは、国家とはちがって、その人個人の「世界」と同義。小人が多い世界で、相対的に自分は巨人であると考える男が客だから小人の国。うーん。なるほどわからん。
自分が大きいか小さいかなんて、他者との相対でしか判断できない。でも、一度判断して自らを当てはめてしまったら、それが自分の主観になるんですよね。。
この話はジョブです。ここから先、さらに物語は迷路に迷うかのように哲学的になっていきます・・・・・・。

 

第三話 善人の国
主観・価値観の話で切り離せないのは善と悪の話ですよね。雰囲気的に最後にもってくるテーマかと思ったらいきなり出てきてびっくりしました。
ある行為が正しいのか間違いなのか、それを判断するのは誰なんでしょう?国家が機能していればそれは司法だったり行政だったりするのでしょうが、この作品では「国」=個人。
自分の行いが正しいと考える個人の世界で、その行為はあくまで「善」なんですよね。なんか、善なんて結局利己的なものなんじゃないかって思えてきました。

 

第四話 生体の国
一転してラブストーリーです。
金属アレルギーの女性に指輪を贈りたい男性。しかし、彼は全身を機械化したサイボーグ兵士だった、というお話です。これが一番好きなエピソードでした。
何がだめなのか、結局決めるのは自分なわけですが、それが他者にも関係するとき、本当にだめなのかどうかは他者が判断するんですよね。恋愛ってそういうものだよなぁ、としみじみ思いました。
理由をつけて逃げてばかりじゃ、いけないんだよなぁ。

 

第五話 迷子の国
他者の価値観に合わせすぎたために、自分の価値観がわからなくなってしまった少女のお話。
これはどんな世代の人にも身につまされる話なんじゃないでしょうか。人ってひとりじゃ生きていけないから、どうしても他者に何かしら合わせて生きていくしかない生き物です。誰だって、大なり小なり何らかの価値観を合わせるのが普通なんじゃないだろうか。
誰かの価値観に振り回されるなんてイヤだ!と声高に主張しても、それ自体がそういう価値観に振り回されているとも言えますし(もう何を言っているのか自分でもよくわかってない)
難しいですよね・・・・・・。価値観がぶつかるのって、とてつもないストレスだよなぁ、と改めて思います。
この話の少女は、価値観を合わせられずに「国」を捨てたメイの話を聞いて、自分の価値観を確立するに至っていますが、そううまくいく人ばかりじゃないはず。

 

続刊はあるんでしょうか。
たまにはこういう毛色の違う少女小説があってもいいと思うので、続きが出るといいな、と思います。

迷子と迷子のアクセサリー店1 家なき少年と彷徨う国 (ビーズログ文庫)迷子と迷子のアクセサリー店1 家なき少年と彷徨う国 (ビーズログ文庫)
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