青春離婚


『青春離婚』(紅玉いづき著/星海社FICTIONS)★★★★★

青春離婚 (星海社FICTIONS)
青春離婚 (星海社FICTIONS)

指先からはじまる恋もある。
スマホを持つことが普通になった、最近の高校生たち。同じ高校を舞台に、男女3組の恋を描く連作短編でした。
人と関わることに不器用な彼らが、スマートフォンを片手に何を想うのか。
未熟だけどまっすぐに思い悩む姿に共感しない人はいないのではないでしょうか。
カバーイラストとコミカライズを漫画家のHEROさんが担当しているということで興味をもったのですが、この小説にHEROさんを起用したことは「良い仕事をしてくれました!」としか言いようがないですね。
HEROさんの作品と通じるところがあって、とても私好みでした。
紅玉さんの作品は初めて読んだのですが、句読点を多用してぽつぽつと降り積もるように語られていく世界は、昔を思い出させて切なくなるような泣きたくなるような、そんな気持ちにさせてくれます。
これは、今まさに高校生の人たちにはぜひ読んで欲しいし、かつて高校生だった人たちが読んでも面白い作品だと思います。素晴らしい青春小説でした。

☆あらすじ☆
11月22日、いい夫婦の日に、わたし達は青春のまま、離婚をする。
同じ名字に、同じクラス。春に進学したばかりの八木商業高校で、偶然に出逢ってしまった“佐古野”郁美と“佐古野”灯馬。すぐにクラスメイトから「夫婦」とはやしたてられるようになり、憂鬱な日々を過ごしていた郁美だったが、ある日、灯馬のアイディアで、ふたりは夫婦の秘密を共有することになる――。
星海社ウェブサイト『最前線』にて“いい夫婦の日(11月22日)”に公開され、イラストを担当したHERO自身のコミカライズでも話題を呼んだ表題作に書き下ろしを新たに二篇加え、ついに単行本化。
今、スマートフォンを通じて掌(てのひら)の中にある恋を描いた、紅玉いづき×HEROのタッグで贈る最新作。

以下、ネタバレありの感想です。

 

表題作。偶然同じ姓だったことから、クラスメイトにからかい混じりで「夫婦」と呼ばれることになった郁美灯馬が、周囲には秘密でスケジュール管理アプリを作ることで仲良くなっていくお話。
なのですが、出だしから「ねぇ、離婚しよう?」と始まります。不穏です。

「夫婦」と呼ばれる穏やかな関係に甘んじる郁美。
同時に彼女は、両親という最も身近な「本当の夫婦」はすでに破綻しているものであることをよく知っています。

郁美視点で語られる物語の中、彼女にとって「夫婦」という関係は「その先、がない」完結してしまったものの象徴だったのでしょう。
離婚する以前から別居し、離婚が決まったことに晴れやかな表情を見せる母親を見て、郁美は「夫婦」というレッテルに不安を抱かずにはいられなかったのかもしれません。
だからこそ、付き合ってもいない、本物ですらない「ニセモノの夫婦」にすぎない自分たちの関係に安心しつつも怯えたのかもしれませんし、高校生活の終わりという期限が迫る中、彼女は完結した関係にとどまったままの自分に焦躁を抱いたのでしょう。
このあたりの郁美の心理描写は圧巻で、胸に迫るものを感じました。

周囲に押しつけられたレッテルであっても、それを心のより所にせずにはいられない。だけど、このままでは次に進めない。
安定した関係に波紋をつけたくない気持ちもよくわかるだけに、「離婚」を選択した郁美の決意と涙、その結果にため息が漏れました。

 

私もtwitterをやっているのですが(@mikannoko1121)、未だにbotの仕組みがわかっていなかったのでこの話を読んで「ああこういうことなのか」と勉強になりましたw

前のお話の灯馬が作ったアプリのファンが作った非公式のヤギbot。
それを介して知り合った二人の男女のお話で、botを作った「僕」が、botのフォロワーの「アリマユ」に恋をする話です。

Twitterだけでしか関わりのないふたり。
「僕」が「アリマユ」の動向を知ろうとしてTLに張り付いているところはちょっと怖かったです。ネットストーカーってこういうものなんだろうな、とゾクり。

Twitterをやっていると、自分がみているTLのアカウントの先に生きている誰かがいるという事実が不思議に思える瞬間があるっていうのはよく分かります。
現実で普通に生活しているだけだったら絶対に交わることのない人でも、共通の趣味だったりコミュニティだったりで簡単にネット上の交流が持てる時代。
この話の最後はハッピーエンドですが、「僕」の行動も「僕」を探そうとする「アリマユ」も危ないなぁと思ってしまうのは最近の物騒な世情のせいでしょうね。

ただ、確かに物騒で悲しい事件は多いのですが、それでも文字だけで恋に落ちることが一概に否定されるべきではないでしょうし、こういう出会いも悪くはないのかもなぁと思わせる素敵な話でした。

 

お腹の減る話でしたw
両親の再婚に伴い、いずれは「兄妹」となる二人が出会うお話です。
連れ子同士の恋というのは少女マンガでは割とよく見かけるテーマだったりしますね。

料理が得意で「レシピファーム」というアプリのランカーでもある真啓と、食べることに興味が持てない梓菜
真啓と梓菜が二人で料理をするシーンはとても笑いました。パスタを線香にしちゃうのって誰もが通る道ですよね(え、違う?)

父と娘だけ、母と息子だけという関係しか知らない二人は、「家族」がどういうものかわからない。
それでも料理を一緒に作りながら歩み寄っていく二人が、「恋人」をすっ飛ばして「夫婦」という関係を選ぶのか、彼らの関係の終着点は見えないまま物語は終わります。
どうなるのかな。読者としては二人が仲良く食卓を囲む姿を想像するしかないですが。
それがどんな名前の関係であっても、この二人はうまくやっていけそうです。

それはそうと、真啓は「料理をする男子」というイメージに戸惑いを感じているようでしたが(亡父の影響とは言え)、最近では割と古い男子像なのではないでしょうか。
「男子ごは●」とか「M●C●’Sキッチン」とか、男性も料理をするというのはずいぶんと前から流行しているように思います。きっと、彼も大学生になったら料理のできる男性であることがアドバンテージであることを知るに違いないでしょうね。そして、彼女に美味いご飯を食べさせて恨めしい眼で睨まれるといいと思う!

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