異人館画廊1 盗まれた絵と謎を読む少女


『異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女』(谷瑞恵著/集英社コバルト文庫)★★★★☆

異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女  (コバルト文庫)
異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女  (コバルト文庫)

「伯爵と妖精」「思い出のとき修理します」の谷瑞恵先生の新作。
図像学者の千景と画廊経営者の透磨が、見ると人を不幸にさせる図像が仕込まれた絵の行方を追うお話でした。

図像学というとあまり聞き慣れない言葉ですが、本作を読んでいてダン・ブラウン氏のラングドン教授シリーズ(「ダ・ヴィンチ・コード」etc)を思い出しました。蘊蓄の分量とかはもっとライトですし、事件そのものもあれみたいにおどろおどろしいわけではないんですけど。

絵画に描かれた図像に込められた意味をわかりやすく端的に示してあり、絵画盗難事件から始まる様々なトラブルや主人公千景の過去などに図像の謎解き要素を絡ませつつ、物語は展開します。

千景と透磨の距離感もじれったくて好みでした。幼なじみである千景のことを見守りつつ、敬語口調で毒舌を吐く透磨が素敵すぎます。ライバルにさりげなくない牽制をかけるとこなんか・・・・・・もう!て感じでした(笑)

1冊で完結していますが、シリーズ化してほしい・・・

それにしても、これは「コバルト文庫」なんでしょうか。
コバルトの公式サイトに掲載されているものの、挿絵はないし、カバーの装丁は既存のコバルトのものじゃないですし、発売日も他と異なっていました。かといって集英社文庫とは違った扱いぽいですし。もしかしたらコバルト内の新規レーベルのテストモデル?メディアワークス文庫的な。

☆あらすじ☆
独自の意味を背景や小物に込め、暗号として絵画にする技法、図像。英国で図像学を学んだ千景は、祖父の死を知り日本へ戻ってきた。今は祖母が経営する画廊で、2枚一組の絵画の鑑定依頼を受けた。その絵画は盗難品でいわくつきらしく…!?

もうちょい詳しく、ネタバレ感想。

 

主人公此花千景は18歳にしてイギリスの大学を出た図像学者です。
祖父の死をきっかけに10年ぶりにイギリスから日本に帰国した千景のもとに、保険会社からある依頼の電話がかかります。

 

その内容は、美術館から盗難にあった2枚の絵画が取り戻せそうなので鑑定を依頼したいというもの。

 

彼女と共に盗まれた絵画の行方を追うことになったのは、西之宮画廊の若き経営者であり、千景とは10年ぶりに再会した幼なじみである西之宮透磨
千景は透磨のことを苦手に感じていたものの、しぶしぶ彼と彼の仲間達に協力することになります。

 

千景や透磨と一緒に絵画盗難事件の捜索に乗り出すのは、絵画収集サークル〈キューブ〉のメンバー。
千景の祖母であり、異人館画廊の主人でもある此花鈴子
異人館画廊のバイトでメイド姿の自称女優江東瑠衣
カウンセラー的占い師の槌島彰
姿を見せない情報屋カゲロウ

 

それぞれが自分の得意分野を最大限に生かし、盗まれた絵画を現在の所持者を突き止めたり、強奪されてしまった絵画を取り戻そうと奮闘します。
まさかラストのオークションで鈴子おばあちゃんまで活躍するとは思いませんでした(笑)

 

ただ、絵画は無事に取り戻せたものの、一緒に明るみに出てしまった事実は後味の悪いものでした。孫のためを思ってナイフを取り上げたのに、それが結局孫の自衛手段を奪ってしまったのではないか、と悔やむ滝見会長の姿が切ない。

 

絵画盗難事件と同時に、千景が7歳以前の記憶を失ったきっかけとなった過去の誘拐事件についても徐々に明かされていきます。

 

小さい頃から人とは違う感性を持つために、画家である祖父以外、両親にすら理解されていないと怯えていた千景が、それを確信したトラウマから目を背けるように記憶を封じてしまった誘拐事件。
両親に捨てられてしまった千景の苦しみは物語の各所で出てくるのですが、とても痛々しいです。特に戸村笠井の妻に対して感情をはき出した千景の姿は、彼女の癒えないトラウマが切実に表れているように思えました。

 

千景もかわいそうだったのですが、透磨の心境も切なかったです。まぁ、透磨は、千景に負い目がある割には毒舌がさえていましたがw
千景が監禁されてしまった際に脇目もふらずに必死に手がかりを追っていったりと、透磨にはいかにも少女小説ヒーロー的なかっこよさがありました。
千景と再び昔のような近しい存在に戻れる日はくるのでしょうか。まぁ、ライバルである阿刀京一に対する堂々とした牽制をみるに、そんな日がくるまでは彼女に他の男を寄せ付けないような気がしますけど(笑)
京一とのデートの約束を延期させた上にちゃっかり自分がデート相手にすり替わってる透磨さんは本当に輝いていましたw

 

メインテーマである図像術に関しても、ライトノベル的に丁度良い分量だった気がします。千景の祖父の残した絵を読み解くシーンや、図像の仕掛けられた〈愚者の船〉の絵を読み解くシーンはなかなか面白かったです。いいですよね、黙示録とか出てくるとテンションがあがってしまいますよね

 

1冊でとても満足しました。ですが、けっこう興味深いテーマの作品だし、千景と透磨のその後もかなり気になるのでぜひシリーズ化してほしいです。

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