折れた竜骨


『折れた竜骨(上・下)』(米澤穂信/創元推理文庫)★★★★☆

折れた竜骨 上 (創元推理文庫)
折れた竜骨 上 (創元推理文庫)

本屋さんで目に止まって購入。第64回日本推理作家協会賞受賞作で、様々なミステリーランキングで1位や2位を獲っている作品だそうです。
帯のあおりが秀逸。「魔術と剣と謎解きの巨編」。舞台は中世イングランドのソロン島で、魔法とか騎士とかわんさか出てきますが、実態は王道ミステリーでした。

☆あらすじ☆
ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。
自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン)」候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ?魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?

以下、ネタバレありの感想です。

 

米澤穂信さんは可愛らしいカバーの「小市民シリーズ」とかでお名前は知っていたのですが、著作を読んだのは今回が初めてでした。

 

「折れた竜骨」は、主人公アミーナの一人称視点で物語が進んでいきます。
彼女はソロン島領主の娘であり、残念な跡取りのお兄ちゃんよりずっと冷静かつ理知的な女性です。
そんな彼女が島で2人の客人、騎士ファルク・フィッツジョンと従士ニコラを迎えた晩、父親が何者かによって殺害されてしまいます。
地理的な条件から密室になった小ソロン島で突如起こった殺人事件を、ファルクが探偵役となり調査をすることになります。
ファルクは実は騎士団の裏切り者「暗殺騎士」を追うためにソロン島にやってきた魔術を使える騎士であり、殺人を犯したのは暗殺騎士により操られた「走狗」であると、最初に断言します。
真犯人は暗殺騎士であるのは明らかであるため、物語は誰が「走狗」なのか、という謎を主軸に展開していきます。

 

この本で面白いなと思ったのは「魔術」の位置づけでした。
現代ミステリーでは、事件解決のヒントは科学捜査によって得られていくのですが、「魔術」は科学捜査を代替するものとして利用されます。
魔術は物語の中では不可思議でありながら「技術」として扱われ、これによって足跡の発見や凶器の握り方などがヒントとして与えられることになります。
それらのヒントを得た上で、あとは探偵とその助手による聞き込み調査がひたすら行われることになります。
論理的な思考による推理が展開されていく中で、物語全体に張り巡らされた伏線は徐々にたぐり寄せられ、ラストに一挙に回収される様子は圧巻でした。

 

また、この物語はその舞台設定も十分に生かしています。
領主家の宿敵として現れる「呪われたデーン人」の襲来と戦闘の場面は迫力あるアクションが描かれており、一瞬違う小説を読んでいる気になりました。
中世ヨーロッパならやっぱり剣の戦いがなくちゃね!という満足感まで得られるとは、恐るべし!笑

 

ただ、この呪われたデーン人絡みのシーンが長かったせいか、少数に絞った容疑者各人の場面が短めで、途中で犯人が予想できたのが唯一の不満かもしれないです。
探偵さんが犯人っていう真相は、私は割と好きなんですが。もうちょっとびっくりしたかったかもしれない。
それでも、ファルクとニコラが選んだ結末そのものはあまり予想できておらず、悲しいものでした。微笑ましい師弟関係に好感があっただけに切なかったです。
ニコラはファルクの遺志を継いで立派な騎士になれるといいですね。彼のその後の活躍が読みたいなぁ。

 

あと意外だったのが主人公であるアミーナの立ち位置。
一人称視点のミステリーだし、彼女がどこかで大きく物語の謎に噛んでくるかと思っていたのですが。
ただ、本来「傍観者」であるべき「探偵」が犯人である以上、「傍観者」としての役割をアミーナに与えていたのかもしれないですね。

 

総合してとても面白いミステリー小説でした。
舞台設定と小道具が秀逸な、まさに「魔術と剣と謎解きの巨編」というキャッチコピーにふさわしい作品だと思います。
何より著者の文章力・構成力が素晴らしい。伏線の張り方・回収の仕方も繊細かつ丁寧なものでしたし、他の著作も気になってきました。
とりあえず同じ創元推理文庫から出ている「小市民シリーズ」を手にとってみようかな。

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「折れた竜骨」への4件のフィードバック

  1. 「折れた竜骨」面白いですよね。米澤穂信先生の作品はアニメ「氷菓」で自分は知りました。
    アニメ化もされた「古典部シリーズ」もお勧めですよ。
    今年の11月に6年ぶりの新刊が出るみたいです。

    1. 名しさん、コメントありがとうございます。

      米澤作品は「折れた竜骨」が初読みだったんですが、これが面白くてその勢いで古典部シリーズも買ったんですよねぇ。
      そして積んでます・・・・・・(´・ω・`)
      新刊が出るなら今こそ読むときなのかも!

  2. ぜひぜひ!アニメは原作に忠実だったので内容自体はアニメでやってない続きの話しの「2人の距離の概算」を除いてほぼ一緒ですが、温度差と言いますか?微妙にキャラのイメージが原作とアニメで違う感じで、そこら辺が自分は面白かったです。

    1. 了解です!

      アニメの方も話題になってたので気になっていたものの、見れずじまいだったんです。
      dアニメストアに入っていたので思わずチェックを入れてしまいました(^^)

      原作とアニメの両方を比べるのも面白そうですね。楽しみです!

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